英米法でいう「危険負担」の定義とは?(最終章)

これまで、英文契約書に関する書籍は多数読んできたので、この手の本は満腹気味でしたが、(専門)商社(なんちゃって)法務マンの私としては、「元商社ベテラン法務マンが書いた 英文契約書ハンドブック(宮田 正樹氏著作)」を書店で見つけて、ジャケ買いしてみました。その結果、以下の通り、非常に良い買い物となりました。

本書の内容は下記目次をご覧頂きたいのですが、早速ですが、本書で非常に勉強になった箇所を以下の通り抜粋させて頂きます。


④危険(RISK)(危険の移転)
日本でいうところの「危険負担」は、船が沈没するなど債権者・債務者いずれの責めにも帰し得ない事由で引渡債務等が履行不能となった場合、反対債務である代金債権も消滅するのかどうかの問題であり、引渡債務が完了したかどうかという問題とは(密接にかかわるものの)別の話です。(民法534条から536条に規定されています。)

 ところが、英米法でいうところの「危険(risk)」は、「履行危険」(いつの時点で売主は引渡債務を完了したのかの問題、言い方を変えれば、いつ引渡債務は消滅するのかの問題)なのです(インコタームズやウィーン売買条約で用いられている「risk」という用語の場合も同じです)。



約4年前に、「日本でいう危険負担」と「英米法、インコタームズ、ウィーン売買条約でいう危険負担」の概念は同じなのか、という記事2つを書き、その際には、結局、どうやら違うらしいということは分かったものの、曖昧な理解で終わっておりました。しかし、上記問題意識を頭の片隅に持ち続けていたところ、法務歴10年にしてようやく、上記書籍により問題が解決しました。遅すぎですね・・。

日本の場合には、過失責任の原則があることから、双方の責に帰すことの出来無い事由により、一方の債務(例えば売主の引渡し義務)の履行が出来なくなった場合、その債務は消滅し、もう一方の債務がどうなるのか、という問題が生じて、危険負担の定めでその問題を解決します。

一方、英米法上等では、厳格責任の原則があることから、危険が移転するまでに、双方の責に帰すことの出来無い事由により、一方の債務(例えば売主の引渡し義務)の履行が出来無い場合でも、売主は履行不履行による損害賠償責任を負担し、もし、不可抗力条項を契約書で定めていた場合には、不可抗力条項の適用の有無やその内容、フラストレーションの法理について検討する、ということになるようです。

非常にすっきりしました。

※なお、不可抗力条項があれば、日本法が適用されても、英米法が適用されても、結局、同じ結論になると考えてしまいそうになります。しかし、一般的な不可抗力条項では、不可抗力による履行遅滞は免責されるとは定められているものの、履行義務が消滅するとまでは定められてはおらず、全く同じ結論になるというわけでは無い、と言う点には留意が必要ですね。

ちなみに、毎年、新入社員研修で「契約」に関する講師をする機会があり、その場で、「危険負担」とは何たるかを解説しておりますが、その際には、日本法で言うところの「危険負担」の定義をこれまで教えておりました。

しかし、同じ日程で行われる貿易管理の授業では、貿易管理部門の担当者が、インコタームズ等に関する貿易の知識について新入社員に対して講義を実施しております。

その為、「契約」に関する講義中、基本契約書上の「危険負担」とインコタームズ上の「危険負担」は同じなのかと、新入社員から質問を受けないか、これまでヒヤヒヤしながら講義をしておりましたが、来月実施する上記研修では、自信を持って研修に臨めそうです。

ただ、この数年は、講師は後輩の法務担当が行い、私はオブザーバーとして参加するだけなのですが、基本契約書上の「危険負担」とインコタームズ上の「危険負担」は同じなのか、後輩に突然、質問してみて、どのようなリアクションを取るのか見てみるのも面白いかもしれませんね (゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ

英米法でいう「危険負担」の定義とは?
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-358.html

英米法でいう「危険負担」の定義とは?(その2)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-414.html

<本書目次>
1 英文契約書の基本知識(国際契約と英文契約書;一般条項)
2 具体的な契約書に基づく解説(秘密保持契約書と予備的合意書
  (レター・オブ・インテント)
  売買契約書
  販売特約店契約書
  ライセンス契約書
  商標ライセンス契約書
  特許ライセンス契約書
  業務委託契約書)
3 補足関連知識(インコタームズの解説;ウィーン売買条約;貿易実務)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
・格付けはなぜ下がるのか(松田 千恵氏著作)
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・中国・外貨管理マニュアルQ&A 2016改訂版(水野真澄氏著作)
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・会社法(田中 亘氏著作)
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