特許という武器の振り回し方には注意

先般、「知財スペシャリストが伝授する交渉術 喧嘩の作法」(久慈直登氏著作)という本を読んでみました。

「知財スペシャリストが伝授する交渉術 喧嘩の作法」という書名からして、自己啓発本と勘違いして書店で手に取らない人もいるかと思いますので、(大きなお世話ながら)書名で損をしているのではないかと思いますが、本書は(その辺の薄っぺらい)自己啓発本ではなく、下記目次の通り、ホンダで10年以上知財部長を務めた著者が、知財という武器を使ってどう戦っていくか、という知財戦略を解説した書籍です。

本書の素晴らしさはアマゾンの各レビュワーに譲るとして、本書で個人的に心に留まった箇所を以下の通り抜粋させて頂きます。

<本書p157一部抜粋>
日本企業同士で知財を融通し合えるか?
防衛的アグリゲーターの手法を日本の産業界で応用できないかと考えてみると、日本の業種ごとに複数の企業で緩いクロスライセンス契約、または緩いパテントプールを作り、外部から攻撃されたときに他の企業の知財を利用させてもらい、反撃するということがありうる。
   (中略)
日本の工業会の中で情報交換をしすぎると、対外的には独占禁止法に触れる談合のように思われるのではないか、と一種自制しているようなところがあったが、知財法は独占禁止法と真っ向から対立する独占奨励法である。日本企業の知財戦略は、制度上許される最大のことをすればいいのである。
<本書抜粋終了>

上記抜粋箇所を読み終えて、「本当にそうなのだろうか・・」と違和感を感じつつも、違和感を表す明確な言葉を持ち合わせておらず、もやもやした状態で本書を読み終えたのですが、本書を読み終わったちょうど直ぐ後、遅ればせながら読み終えたBLJ 2016年3月号にその違和感の答えがありました。

BLJ 2016年3月号で連載されている「独禁法の道標 2」では、第4回(知的財産権の行使と独禁法)として「マンホール鉄蓋事件」が解説されており、独占禁止法第21条に定める適用除外規定は、特許権等の制度の趣旨を逸脱した権利行使・権利濫用には適用されない、という点が解説されていました。

詳しくはBLJ 2016年3月号をご参照頂きたいのですが、特許権という武器を持っていても、独占禁止法で制限している反競争的行為等を伴う行う場合には、その武器が諸刃の刃になることもある、ということですね。

なお、「知財スペシャリストが伝授する交渉術 喧嘩の作法」の上記抜粋部分では、「制度上許される最大のことをすればいい」と記載されている通り、その文意としては、「特許という武器を持っていれば、好きなように振り回しても良い」ということを解説・主張したものではありませんが、上記の通りであると勘違いする読者もいるかもしれませんので、注意が必要ですね。

今度、ライセンス契約書をドラフト・検討する際には、特許法等の制度だけでなく、この契約書・スキームを公取委はどう考えるか、という視点を併せ持つようにしたいと思います。

<独占禁止法 第六章 適用除外 第21条>
この法律の規定は、著作権法 、特許法 、実用新案法 、意匠法又は商標法 による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。

<本書目次>
第1章 知財活動スタート
第2章 出願戦略
第3章 権利行使
第4章 パテントトロールと異分野からの参入
第5章 ノウハウの防衛
第6章 ブランドマネジメント
第7章 国家間知財競争
第8章 未来へ
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