日本のPL法では、逸失利益も補償の対象となる件について

今般は、土庫 澄子氏著作「逐条講義 製造物責任法: 基本的考え方と裁判例」を読んでみました。

早速ですが、本書で参考になった箇所を以下に抜粋させて頂きます。

<以下、本書抜粋>
EC指令においては、製造物責任によって救済する財産的損害は個人の私的生活における財産的被害に限られています(cf. 85/374/EEC Artc.9)。本法の立法時には、消費者の被害救済を主眼とする本法の救済対象に事業者の営業上の損害を含めるのは適当ではないとの議論がなされました。また、法人の逸失利益を損害とすると賠償額の算定が困難になるとの懸念もありました。
しかしながら、本法は特に被害者を特定せず、賠償される損害の範囲を制限する特別の規定を置くといった立法措置をとるものではありません。したがって、賠償義務の範囲は一般不法行為法の考え方に沿って相当因果関係理論により妥当な範囲が判断されることになります。
<抜粋終了>

ということで、日本の製造物責任法では、法人の逸失利益も補償対象となりうるようですね。
そこで気になるのが、自社で加入している現在のPL保険の内容で十分なのか、という点です。皆さんの会社はいかがでしょうか。

ちなみに、私の所属している会社(商社)は、今、自動車業界に力を入れていますが、自社が自動車メーカーやTier 1メーカーに納入した部材について品質不良問題、製造物責任問題が発生し、顧客の製造ラインがストップした場合、莫大なライン補償を要求されるリスクがあります。

なお、自社が納入した部材に起因して、第三者の身体、生命、財産に損害が発生した場合であれば、顧客の逸失利益分についてもPL保険でカバーが可能かと思われます。

しかし、PL事故に繋がりかねない欠陥が顧客の製造工程や市場で発見され、第三者の身体、生命、財産に損害が発生することは未然に避けられたという場合(=品質不良問題で収まった場合)、顧客への補償という金銭的な負担だけを考えれば、むしろ、第三者の身体、生命、財産に損害が発生してくれた方が、PL保険が適用されて良かった、という非常に不謹慎な話になってしまいます。このような思考をせざるを得ない事態が生じないよう、品質管理を徹底したいものです。

また、ついでに、商社に勤務している私がPL関連で個人的に気になっているのが、以下のようなケースです。

・当社は、汎用品・カタログ品を仕入先メーカーから購入し、顧客に販売。
・当社と顧客との間では基本契約書を締結しており、当該契約書には
 製造物責任条項が定められている。
・当社と仕入先メーカーとは基本契約書を締結していない。
・当社が納入した上記製品に起因して、第三者の身体、生命、財産に対する
 損害が発生。

上記ケースの場合、当社は製造者ではなく販売者ですから、当社が輸入者ではない限り、顧客は製造物責任法に基づいて当社に責任追及することは出来ません。しかし、基本契約書に定めた製造物責任条項に該当したとして、当社に対して債務不履行責任を請求することは出来ます。

なお、製造物責任法の解説(長瀬二三男氏著作)によれば、

<以下、上記書籍抜粋>
最終製品たる製造物の欠陥が、その製造物を構成する部品・原材料に起因している場合の、最終製品の製造業者と部品・原材料の製造業者との関係や、表示製造業者と真の製造業者との関係など、複数の責任主体の関係についても、民法の不法行為責任の場合と同様に解される。すなわち、各責任者は被害者に対して不真正連帯債務の関係にたち、各自が損害一額全額の賠償責任を負うことになる。そして、いずれか一方が賠償すれば他方も賠償義務を免れ、不真正連帯債務者間では、実際に賠償したほうが他方にその負担部分を求償するという関係になる
<抜粋終了>

ようですが、上記ケースで言えば、当社が「債務不履行責任」に基づいて顧客から損害賠償請求を受けて請求に応じた場合、当社は仕入先に対して求償をすることが出来るのか、求償する場合には、どのような法的根拠となるのか、という問題があります。

瑕疵担保責任に基づいて求償する場合、逸失利益まで仕入先メーカーに請求出来るのか、という懸念がありますし、不法行為責任に基づいて求償する場合、仕入先メーカーの故意・過失を当社が立証出来るのか、という懸念があります。

このような問題が生じないよう、品質管理を徹底することはもちろん、万一の場合に備えて、仕入先とも製造物責任条項を定めた基本契約書をしっかり締結したいものですね。

また、仕入先に法的に求償可能だとしても、仕入先に十分な補償能力が無いと意味が無いので、当たり前の話ですが、仕入先の選定時には、仕入先の技術・生産能力に加えて、会社の規模、体力等もしっかり検討したいものですね。

以上、つれづれなるままにPL問題について書いてみました。

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
【至急】塩を止められて困っています【信玄】(スエヒロ氏著作)
よくわかる最新太陽光発電の基本と仕組み(東京理科大学総合研究機構太陽光発電研究部門著作)
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

hitorihoumu

Author:hitorihoumu
35歳 男 二児の父
主に、週末にブログを更新する予定です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: