書籍:訴訟の心得―円滑な進行のために

今般は、弁護士の中村 直人氏著作「訴訟の心得―円滑な進行のために」を読んでみました。

本書は、表題だけ見ると、弁護士向けの本のようですが、私のような法務担当向けの内容にもなっており、下記目次に記載の各テーマについて、弁護士・当事者がどのような心構えで対応すべきか、筆者の経験に基づいた熱い?解説がされており、参考になりました。

早速ですが、毎度の通り、本書で個人的に心に留まった個所を以下に抜粋させて頂きます。

以下は、口頭弁論期日の目的について書かれた箇所の抜粋です。

<本書P77、P78一部抜粋>
相手方の代理人に対して種々釈明を求めたり、要求したり、いろいろ難癖を付けるのが好きな代理人もいる。法廷パフォーマンスである。しかしこれは訴訟観が違っている。
筆者が思うに、訴訟は、原告と被告が戦っているのではない。原告が裁判官を説得しようとし、被告も裁判官を説得しようとし、裁判官がどちらがより合理的かを判断する作業である。相手方は、裁判官である。裁判官を説得するのが仕事だと認識すれば、相手方代理人にいちゃもんを付けても意味はなく、むしろ裁判官の心証を知ることが最大の目的であることが分かる。

さらに法廷で、演説してみたり、大げさな仕草をしてみたり、色々な傍聴席向けのパフォーマンスをする弁護士もいる。訴訟の上では全く意味がないことである。それを知らない依頼者が、「うちの先生はいっぱい頑張ってくれた」などと喜んだりするが、企業法務の担当者であれば、そういうものにごまかされないことだ。
<抜粋終了>

私の少ない訴訟経験からしても、上記のようなパフォーマンスをしてくる代理人に遭遇した機会がありました。

法廷内での相手方当事者(偉い人)の発言に対して、(主任弁護士ではなくボス弁で、ろくに主張書面を読んでいないと思われる)相手方代理人弁護士が、腕組みをして踏ん反り返りながら、相手方当事者(偉い人)の発言に乗っかる形で、何の証拠も無い話をイメージだけで主張し(具体的なことを書けずすみません・・。)、後で、相手方当事者(偉い人)の発言に一部誤りがあり、訂正する羽目になるシーンに遭遇したことがありました。

社内の打ち合わせならいざ知らず、ろくな証拠も無いのに、法廷の場で依頼者の機嫌を取る弁護士の姿勢は如何なものかと考えさせられました。

パフォーマンスはパフォーマンスと割り切った上でやるのはまだ良いかと思いますが、陪審制ではない日本において、裁判官が最終的に判断する裁判においては、あくまで、裁判官の心証を一番に考えるべきという筆者の主張はその通りですね。

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次は、本書内で、反対尋問について書かれた箇所について、以下の通り抜粋させて頂きます。

<本書P125一部抜粋>
前章では、威嚇的質問であるとか、誘導質問であるとか、揚げ足取り質問であるとか、いかがわしい反対尋問の例をたくさん挙げたけれども、裁判官はそういうことが行われても、それで証人の信用力がないなどという心証の取り方はしていない。裁判官は、大きなストーリーの中で、矛盾がないか、不自然なこと、経験則に反することあるんじゃないか、ということを見ている。そこで些末な言い回しの違いがあったとか、感情的になって過剰な表現をしたとか、冷や汗をかいていたとか、動揺していたとか、そういうことで事実の認定をしない。
<抜粋終了>

<本書P130一部抜粋>
裁判官は証人の信用性をどう測っているのか。
すでに述べたが、判決の手順は、動かしがたい事実を拾い出し、ストーリーを組み立て、当事者の整合性を検証することである。争いがある場合に、一個一個の事実を認定するためには、処分証書があるか、または十分な間接事実の積み重ねがあるかである。そして証人は、そのストーリー全体の自然らしさ、整合性を検証するために重要ということになる。
逆に言うと、まず証人の証言だけで、何も間接事実もない主要事実を認定することなど無理である。そんなことは期待できない。
<抜粋終了>

証人尋問をする場合は、事前に、弁護士と一緒に、証人の事前練習というか、記憶の喚起をするわけですが、特に証人がこれまで証人になった経験が無い場合、証言する内容が過去の記憶に基づいた内容であることとから、事前練習した通りにはなかなか発言してくれません。

そんな時、証人尋問に立ち会っていた私のような訴訟経験の浅い法務担当としては、証人の個々の発言に一喜一憂してしまうものです。

一方、証人としても、「想定外の質問を聞かれて、トンチンカンな発言をしちゃってすみません。あの発言はまずかったですかね。動揺して声をぼそぼそ小さい声になっちゃったし。」と反省している一方で、証人尋問の出来栄えを当方側代理人弁護士に確認してみると、「何の問題もありませんでした。ほぼ完ぺきな内容でした。」と言われて、弁護士と当方・証人間の出来栄えに対する認識にギャップを感じることがありました。

今回、本書にて、証人尋問は、裁判官が、証人の発言が、当初、自身が思い描いていたストーリーと矛盾することは無いか、という大きな視点から証人の発言を捉えていることを知り、合点がいきました。

今度、私の会社が当事者として証人尋問を行う機会があれば、上記を念頭に置いて臨みたいと思います。

<目次>
第1章 訴訟の見立て
第2章 主張
第3章 証拠
第4章 期日
第5章 証人尋問
第6章 判決対応
第7章 企業訴訟関連の判決とその特徴
第8章 和解

P.S.
これから読む本を探している時に、「あれ。この本は面白そうだけど、以前、読んだような気がするなぁ。どっちだっけなぁ。」と感じることがたまにあります。

その際に、本ブログを検索すれば、読んだか読んでないかを知ることが出来るよう、超個人的なメモとして、最近読んだ本を以下に列挙しておきたいと思います。

・自分で考えるちょっと違った法学入門(著者:道垣内 正人氏)
・企業法務のための金融商品取引法(著者:宮下 央氏)
・ファイナンシャル ビジネス法務入門 これからの法律屋は
決算書が読めないと仕事になりません(著者:河村 寛治氏)
・下町M&A 中小企業の生き残り戦略(著者:川原 愼一氏)
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