ライセンスの本質はライセンサーの差止請求権の放棄

今般は、安保智勇弁護士編著の「初心者でもわかる! LawLゆいの英文契約書入門」という本を読んでみました。

本書では、日本茶関連製品を扱う会社(株式会社ティーシード)に勤務する法務部長の福山と、新人法務部員の石原ゆいの巧妙な掛け合い(会話形式)を通して、英文契約書の基礎知識が解説されています。

本書の表紙には、ライトノベルのような萌絵が使われていることから、(誠に失礼ながら)読書前は、表紙で売るタイプの内容が薄い本なのではないかと思いながら本を取りました。じゃあ、手に取るなよという声が聞こえてきそうですが、何か1行でも参考になる箇所があればいいなと思い、本書を手に取りました。

しかし、読んでみましたら、英文契約書の特徴、一般条項からライセンス契約書の説明まで、判例を参照しながら丁寧に解説されており、内容は至ってしっかりしたものでした(何か偉そうですみません・・。)

本書にて、個人的に非常に参考になった個所がありましたので、以下に抜粋させて頂きます。

以下の抜粋箇所は、「知的財産権非侵害表明保証条項の留意点」の解説箇所で、新人法務部員の「ゆい」が勤務する株式会社ティーシードが、同社が有する技術について、第三者からライセンス付与の依頼を受け、ライセンス契約の交渉中に、「ライセンス料を支払う以上、第三者の権利を侵害して使えない技術じゃ意味がない!」と、ライセンシー候補者から非侵害保証条項の追記を主張された場面の一コマです。

ゆいは、ライセンシー候補者の意見に一応の理解を示し、「法律上、ライセンスする以上は、第三者の知的財産権を黙示的に保証したことになると思う」と法務部長の福山に主張して、その根拠として、米国統一商法典(UCC)を挙げましたが、しかし、福山に以下の通り一蹴されています。

UCC 第2-312条
Warranty of Title and Against Infringement; Buyer’s Obligation Against Infringement.
(3) Unless otherwise agreed a seller who is a merchant regularly dealing in goods of
  the kind warrants that the goods shall be delivered free of the rightful claim of
  any third person by way of infringement or the like

<以下、本書抜粋>
部長 君には珍しく「法律的」な議論だ。この米国統一商法典の
    規定なんてよく覚えていたね。
    でも残念ながら、君の議論は間違っている。
    仮に、今回のラインセンス契約に米国法が適用されるとしても
    この規定によってライセンス契約のライセンサーの技術について
    権利非侵害の黙示の保証をすることにはならない。
ゆい どうしてですか?
部長 この規定は商品の売買の場合にだけ適用され、売買契約の
    性質を有しない契約には適用されないと裁判所では
    解釈されているからだ。
(中略)
部長 相手方の主張に対する反論ならライセンス契約の本質から
    説明すれば可能だろう。そもそも知的財産権のライセンスとは、
    「ライセンサーが有する知的財産権を使うなといえる権利を
    ランセイサーに行使しない」という、ライセンサーと
    ライセンシー間の約束にすぎない。
    ライセンサーの権利が第三者の権利の範囲に含まれるかどうかは、
    このようなライセンス契約の本質とは関係がないことだ。
<抜粋終了>

先日、私は、「ビジネスロー・ジャーナル2014年11月号」のある特集を基に、「購入製品が第三者の権利を侵害」=「隠れた瑕疵」?という記事を書きましたが、その中で、

特許権そのものを取引対象としたライセンス契約ですら、「特許権の無効はライセンシーにおいて通常予測すべきリスクとして隠れた瑕疵には当たら」ないということが通説となっているようですので、モノの取引に付随して買主が第三者の知的財産権を侵害したとしても、買主は売主に担保責任を追及することは出来ないのでしょうね。

と記載しました。

ある意味、「ゆい」とは逆のアプローチで、モノの取引に付随して買主が第三者の知的財産権を侵害したとしても、買主は売主に担保責任を追及することは出来ない、と一人で勝手に結論づけて悦に入っておりましたが、日本法は別として、少なくとも米国統一商法典(UCC)には、上記ケースで買主を保護する規定があったんですね・・orz
これは完全に勉強不足でした。

ライセンスを付与された(^o^)/ なんて言いますと、何か権利を得た気になりますが、特に米国法上(米国法という表現の良し悪しは置いておいて)、ライセンスの本質とは、ライセンサーの差止請求権の放棄であるようですので、同じ有償契約とはいえ、売買契約とライセンス契約を同列として扱うことは難しいようですね。

中途半端な知識が一番厄介である、とは良く言われることですが、このライセンス回りについて、私はまだまだまだ力量不足ですので、これを機に勉強を進めてみたいと思います。。

P.S.
いつも拝読している、はっしーさんが運営している「マンサバ」の最近の記事にて、ライセンスに関する参考図書が紹介されておりましたので、まずは上記書籍から読み込んでみたいと思います。

<目次>
第1章 英文契約書序論
(英文契約書のドラフトは誰が作る?;英文契約書に
よく使用される表現)
第2章 英文売買契約書の重要条項
(国際取引の売買代金はどう決める?;期間や期限の
記載について ほか)
第3章 英文契約書によく出てくる一般条項(その1)
(準拠法はどの国の法律?;紛争解決の方法を定めよう ほか)
第4章 英文契約書によく出てくる一般条項(その2)
(なぜ分離・独立性条項が必要なのか;優先する言語を
決めておこう ほか)
第5章 英文ライセンス契約書の重要条項
(ライセンス許諾と権利の範囲;ロイヤルティーの設定 ほか)

初心者でもわかる!  LawLゆいの英文契約書入門初心者でもわかる! LawLゆいの英文契約書入門
(2014/05/31)
安保智勇

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