受入検査条項に注意、弁護士会照会制度の限界(BJL 2014年12月号)

遅ればせながら、「ビジネスロー・ジャーナル(BLJ)2014年12月号」を読み終えました。

本誌では、心に留まった個所が2点ありましたので、その箇所を取り上げさせて頂きたいと思います。

まずは1点目。

本誌では、「契約審査のためのヒアリング実践ノウハウ」という特集が組まれておりました。その中で、田辺総合法律事務所 辻弁護士が書かれた「継続的な動産売買の取引基本契約書」の一部箇所を抜粋させて頂きます。


<以下、抜粋>
2 実態への適合性
これは、上記1①において述べた契約書審査の目的に対応したヒアリング項目である。特にひな形が用いられている場合には、想定している実際の取引内容と契約書の規定に齟齬が生じている可能性がある。「個別契約の成立方法」や「検収の手続き」はそうした齟齬が生じる可能性の高い条項であるが、その他にも齟齬がないか確認する必要がある。
<抜粋終わり>


上記問題については、個人的に苦い経験があります。

基本契約書ではありませんでしたが、単発のスポット取引で、売主から当社に提示された売買契約書をベースに、当社で、当社と買主との売買契約書を作成し、「売主と当社」、「買主と当社」の間で、支払条件以外と取引金額以外はほぼ同一の契約書を締結したことがありました。

その中で、受入検査完了時には、「当社が売主に」、「買主が当社に」、検収書を発行する旨、定めておりましたが、実際には交付されませんでした。

上記契約書締結後、売買対象物の瑕疵を理由に、買主が当社に対する売買代金の支払を拒み、「瑕疵があったから、受入検査後、当社に検収書を交付しなかった」と主張されました。

買主が売買代金の支払を拒否したのは、実は、瑕疵とは関係の無い所にありましたが、契約書と実態に齟齬が生じていたことにより、買主に瑕疵を主張する余地を与えてしまいました。

私が売主から当社に提示された売買契約書をベースに、当社と買主との売買契約書を作成した際、当社側の担当者には、実務と合致していない場所があれば教えて欲しいと伝えており、問題ない旨、担当者から回答を得ておりました。しかし、当社側の担当者の確認不足を責めてこの問題を仕舞にしても、また、同様の問題が生じることになります。

営業担当者は、基本的には、契約書には興味は無いし、内容を確認しないもの、と性悪説で理解して、面倒でも、逐条で内容が実態に適合していることを確認していれば、上記事態は防げたなというのが個人的な反省点です。

また、「売主と当社」、「買主と当社」の契約書の内容を同一にしていたことから、安心してしまったのも失敗の原因でしたが、売主の立場としては、受入検査条項に、「買主から、○日以内に受入検査の諾否の通知が無い場合、受入検査に合格したものとみなされる。」というような条文を、上記売買契約書に定めていなかったことも、反省点です。

契約書が実態に適合しているのかどうかは、法務担当だけでは分からない場合が多々ありますので、面倒でも、齟齬が生じやすいと思われる条文だけでも、逐条で自社側の担当者に確認するようにしたいものですね。

さて、次に、心に留まった個所の2点目。

馬場・澤田法律事務所 安部弁護士と山内弁護士が書かれている「Q&A 法務相談の現場から」という記事では、今月の相談として、「弁護士会照会による情報・資料の取得」が取り上げられておりまして、弁護士照会制度について解説されておりました。

個人的には、弁護士法23条2項に基づく弁護士会照会制度について、恥ずかしながら良く知りませんでしたので、参考になりました。

本記事によりますと、弁護士会照会制度は、債権回収の場面等で活用されることがよくあるようで、「銀行等の金融機関の所在が不明な場合には、銀行等の金融機関に口座の有無・残高を確認する(この場合には確定判決等の債務名義が必要となります)」ことも出来るようです。

ご承知の通り、強制執行手続において、被執行者の預金債権に対して、強制執行する場合は、執行者自らが、当該預金の銀行情報(銀行名、支店名等)を特定する必要があります。裁判所が執行対象債権を探してくれるわけではありません。

なので、被執行者が、強制執行を受ける前に、多額の預金がされている銀行口座を、別口座に移してしまえば、自社だけでは発見しようがないわけですが、そのような中、この弁護士会照会制度は、債権回収手続きにおいて大きな助けになりますね。

ただ、本記事によりますと、「上述したように、判例・裁判例により、弁護士会照会によって照会を受けた公私の団体等には、照会に対する報告義務が認められていますが、照会先たる公私の団体等が正当な理由なく回答を拒絶した場合でも、報告を直接・間接に強制することはでき」ないようで、弁護士照会制度にも一定の限界があるようです。

銀行としても、弁護士照会制度という手続に基づいたとはいえ、顧客情報を第三者に開示したとあれば、顧客情報の秘密管理がなっていない銀行であるという評判が立ってしまいますから、安易に照会要請に応じられない事情があるのでしょうね。

銀行の顧客はあくまで預金者であり、弁護士会ではありませんから(弁護士会が当該銀行に多額の預金債権を保有している場合を除きますが)、弁護士会がなんぼのもんじゃい、というところでしょうか。違うかもしれませんが・・。

照会要請を受けた預金者が、銀行の大口預金者である場合と、少額の個人預金者である場合では、銀行の対応に違いが出たりするんでしょうかね。

さて、上記問題について色々ググっていたところ、非常に気にあるブログを発見しました。

淡路島で弁護士をされている、bakara2012弁護士のブログ(ツンデレblog 淡路島の弁護士が考えたこと)によりますと、「大阪弁護士会と三井住友銀行の間で、預金債権差押命令申立てのため、債務者が三井住友銀行に預金債権を有しているか、有しているとしたらどこの支店に有しているか、残高はいくらか、について、所定の手続をとれば三井住友銀行が回答する合意が成立した」ようです。

三井住友銀行も思い切ったことをしましたね。

bakara2012弁護士も上記記事で書かれていますが、三井住友銀行の対応によって、他の銀行も同様の対応を取るように変わって欲しいものですね。

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