書籍:海外進出企業の贈賄リスク対応の実務―米国FCPAからアジア諸国の関連法まで

近々、私が所属している会社内に、贈収賄リスクに対応した規程を設けようと考えており、私が旗振り役をやることになりましたので、その参考にと、今般は、ベーカー&マッケンジー法律事務所とデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーフォレンジックサービスが出している「海外進出企業の贈賄リスク対応の実務―米国FCPAからアジア諸国の関連法まで」を読んでみました。

関連セミナーに参加したり、法務系雑誌の該当箇所を読んだ限りでは、贈収賄法規について、主に米国FCPA、英国Bribery Act、日本と中国の法規制が解説されるケースが多い印象がありますが、本書では、上記の国の他、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、シンガポールの法制度等が解説されており、参考になりました。

私の所属している会社は、米国、英国、中国以外にも多くの国に現地法人を有しており、その全ての国の法規制について調査することはなかなか難しいですが、なるべく、多くの情報を収集した上で、規程のドラフト作成に取り掛かりたいと思います。

以前参加した贈収賄に関する外部セミナー、法務系雑誌の内容に加えて、本書を読んで考えさせられた、贈収賄に関する規程を作成する上での個人的な留意点は以下の通りです。

<留意点(個人的なメモ)>
贈収賄は禁止するものの、
(1)社会的儀礼行為の範囲内の接待や贈答についてはどう定めるか。
   仮に許容すると規程に明文化する場合、「社会的儀礼行為」の定義をどうするか。
   規程に定義を設けないにしても、「社会的儀礼行為ってどこまでが含まれるんですか?」と
   質問を受けた場合に、どのように回答するか。
(2)禁止の金額基準を設けるのか。
   金額基準を設ける場合、金額基準はどうするのか。
   全世界統一基準とするのか、もしくは、各国の事情を考慮した個々の基準を設けるのか。
   基準金額を設ける場合、「○○円相当以上は禁止」とするのか、もしくは、
   「○○円相当以上は本社法務部門の許可を要する」と定めるのか。
   後者の場合、○○円相当以上の接待や贈答について、本社法務部門に
   申請が来た場合、果たして本社法務部門でその妥当性が適切に判断出来るのか。
   ビジネスのスピードを遅らせる副作用を発生させることなく、贈収賄に関する
   ルールを設けるにはどうすればよいのか。
(3)米国FCPAでは処罰の対象外となっている「合理的かつ善意に行われる支出
   (Reasonable and Bona Fide Expenditures)」、例えば、本書で
   挙げられていた例で言えば、「企業の営業活動において、外国政府に製品・設備を
   購入してもらう為に、外国公務員を日本の工場、設備の見学に招聘する際の合理的な
   範囲内での旅費の負担」等を許容するのか。
(4)ファシリテーション・ペイメントは許容すると明文化するか。
(5)私の所属会社には、日本本社(単体)の役職員が利用可能な内部通報制度を
   設けているが、全世界に適用する贈収賄規制規程を設ける以上、海外現地法人の
   役職員も利用可能な内部通報制度を設ける必要があるが、どうするか。
   通報先は日本本社か兄弟会社か、外部に設けるのかどうか。
(6)本書によると、英国、中国の他、マレーシア、シンガポールも民間人への
   贈賄を規制しているようであるが、民間人への贈収賄を規程にどう盛り込むのか。

とか何とか色々考えていると、関連規程を定めるのはなかなか考慮、社内調整すべきことが多くて大変そうなので、単純に、既に自社内に定めている、法令遵守を謳ったコンプライアンス規程に、「贈収賄は止めましょうね」というような文言を追記して終いにしたくなってきましたが、妥当な規程になるよう最後まで諦めずに頑張りたいと思います。。

最後に、本書の、米国FCPAの「米国内で行為の一部を行った者(Foreign Person Acting within the United States)」の定義に関する解説部分が参考になりましたので、以下に抜粋させて頂きたいと思います。


<本書抜粋 p6~p7>
問題は、DOJにより、その範囲が広く解される可能性があることである。実際に、米国内で贈賄の授受を行う必要はなく、米国内でなされる行為を生じさせた場合には、この要件に該当すると解されている。具体的には、米ドルで贈賄や贈賄資金を送金しただけでもこの適用を受ける可能性がある。特に、発展途上国の公務員が贈賄を要求する場合、現地通貨よりも信用の高い米ドルが用いられることも多い。発覚を恐れて、外国公務員が海外口座(たとえば、香港、シンガポール、スイス、ケイマン諸島)に米国で支払って欲しいと求めてきた場合、かなりの確率で適用される可能性がある。
<抜粋終了>

本書に記載が無かったものの、上記抜粋箇所の「米ドルでの送金」とは、おそらく米国外の人が、米国のコルレス銀行を経由して米国外の人に米ドルを送金した場合を想定しているかと思いますが、上記が正しいとすれば、「当社は、米国以外の国の政府機関とは取引はたくさんあるけど、米国に子会社も無いし、米国との取引も無いから、米国FCPAなんて全く関係ないね」とは一概に言えないことになりますね。


<目次>
第1編 外国公務員への贈賄を処罰する主な法令
(米国FCPAとは―日本企業に適用されるパターン;
英国Bribery Act ほか)
第2編 実効的なコンプライアンス制度の構築(業界別FCPA
違反の執行事例;FCPA違反に対する制裁を回避するには ほか)
第3編 汚職の疑いが生じた場合の対応(司法取引;内部調査)
第4編 アジア諸国の汚職関連法(中国;インド;インドネシア;
フィリピン;タイ;ベトナム;ミャンマー;台湾;マレーシア;
シンガポール)

海外進出企業の贈賄リスク対応の実務海外進出企業の贈賄リスク対応の実務
(2013/05/22)
不明

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