英米法でいう「危険負担」の定義とは?(その2)

今般は、ビジネスロー・ジャーナル(BLJ)の2014年2月号で特集されていた「法務のためのブックガイド」や、複数の法務ブロガーの方達が取り上げられていた「英文契約書の法実務 ドラフティング技法と解説」という本を読んでみました。

本書は、この手(?)の書籍と同様、英文契約書に関する一般的な留意点、一般条項の解説、具体的な契約書に関する解説、という構成となっていますが、私の少ない読書経験から言えば、本書にて、国連ウィーン売買条約(CISG)、ユニドロワ国際商事契約原則(UPICC)を考慮したドラフティングの留意点について、独立した章を立てて詳しく解説されている点が、他の類書に無い特徴かと思いました。

早速ですが、本書の中で個人的に心に留まった箇所の内、「危険負担」について解説した箇所を、少し長いですが以下に抜粋しておきたいと思います。

<以下、抜粋>
危険負担条項では、インコタームズに従い、物品の引渡しの時と同時に危険が移転するという規定が置かれる。CISGでも物品の運送を伴う場合と伴わない場合、運送中の場合と三つに分けて危険の移転条項がある(66条~68条)。ところで、日本民法の危険負担制度(民法534条~536条)とCISGでの危険移転制度は名称は似ているが異なった制度である(前傾371~372頁。この点曽野裕夫=中村光一=船橋伸行「ウィーン売買条約(CISG)の解説(3)」NBL890号、注12参照)。すなわち民法の危険負担制度は、債務者に帰責事由がない後発的な履行不能で債務が消滅した場合、債権者の反対債務の存続に関わる制度であるのに対して、CISGの下での危険移転とは、損失損傷の発生時期により売主の義務違反になるか否か判断する制度である。日本の危険負担の問題はCISGでは契約解除の可否の問題となる。しかし、実際は日本企業の場合、危険移転については、インコタームズが採用されているので、実務的にはこれにより、CISGの危険移転の規定を適用する余地は少ない。
<抜粋終了>

なお、私は以前、「英米法でいう「危険負担」の定義とは?」という本ブログの記事にて、

<以下、抜粋>
今度は、日本も批准しているウィーン売買条約(=国際物品売買契約に関する国際連合条約)の「危険負担」の定めを見てみたいと思います。

CISG 第66条(危険移転の効果)
Loss of or damage to the goods after the risk has passed to the buyer does not discharge him from his obligation to pay the price, unless the loss or damage is due to an act or omission of the seller.

(日本語訳)
買主は、危険が自己に移転した後に生じた物品の滅失又は損傷により、代金を支払う義務を免れない。ただし、その滅失又は損傷が売主の作為又は不作為による場合は、この限りでない。

ということで、ウィーン売買条約では、「危険負担」とは、日本の民法と同様、売買契約において「売主の履行不能の場合の買主の支払い義務の有無」の問題と捉えているようです。
<抜粋終了>

と記載しておりましたが、どうやら私の理解が浅かったようです・・。

CISG第66条では、「買主は、危険が自己に移転した後に生じた物品の滅失又は損傷により、代金を支払う義務を免れない。」とは記載しているものの、売主の帰責性については一切言及されておりません。危険移転後は、売主の引渡し債務が終了しているので、物品が滅失等をしたとしても、買主は代金の支払い義務を負担する、と定めているだけでした。

またしても私の理解不足・読解力不足を露呈した形となり、恥ずかしい限りですが、遅ればせながらここで正しく理解出来て良かったです。

それでは、よしじゃあ、分かったと。CISGでは、日本法でいうところの「危険負担」については定めておらず、あくまで「危険移転(履行危険の移転時期)」について定めているだけ、というのは理解したけど、じゃあ、英米法を準拠法とした契約書における「risk of loss」条項では、CISGと同様、あくまで「危険移転(履行危険の移転時期)」について定めていると考えて良いか、という疑問が生じます。

上記については、英米法の法理では、「契約締結後に不測の事態が発生して、履行不能となった場合でも、基本的には当該債務者は免責されない。」と考えることを考慮しますと、「過失責任主義を前提とした日本法でいうところの危険負担」は「英米法でいうところの危険負担」とはイコールではない、と考えて良さそうですね。たぶん。

正解をご存知の方にとっては、何を今更な話ではありますが、まだいまいち、私は危険負担周りの理解が乏しいので、今後の個人的な課題として、勉強を進めていきたいと思います。

願わくば、今年入社した新人法務担当(Aさん)から、「日本法でいう危険負担と、英米法上でいう危険移転は同じ概念と考えて良いでしょうか?」という質問が来る前に、正解を探しておきたいと思います・・。万一、明日、上記質問を受けた場合には、逆質問で、「逆に、Aさんはどうだと思う?私が今ここで正解を教えるのは簡単だけど、それじゃあAさんの勉強にならないから、一度、自分で調べてみるといいよ。調査してみて正解が分かったら、報告してね。Aさんの理解が正しいか答え合わせしよう。」とでも言って、時間を稼ごうと思います・・。

<目次>
第1章 英文契約書の基礎知識(英文契約書ドラフティングのコツ
    (外国人弁護士から日本クライアントへ)
    英文契約の契約解釈原則 ほか)
第2章 英文契約書の共通条項と解説(英文契約書の基本的形式;
    一般条項(Boiler-Plate Clauses)
第3章 英文契約書類型別ひな型と解説(国際売買契約書;
    販売代理店契約書 ほか)
第4章 国連ウィーン売買条約(CISG)、ユニドロア国際商事契約原則
    (UPICC)の下でのドラフティング留意事項(CISGとは;
    UPICCとは 他)

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(2012/10/01)
杉浦 保友、菅原 貴与志 他

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