反社会的勢力の排除条項では、「解除」ではなく「解約」を使用してもおk?

最近、私が所属している会社が、自社で保有している不動産を第三者に賃貸することになり、私が賃貸借契約書のドラフトを作成することになりました。

そこで、まずは、ネットで参考になりそうな契約書が転がっていないか探したところ、京都府の宅建協会が、事業用不動産の賃貸借契約書フォーマットを公開していましたので、この契約書をベースに作成してみました。

※ちなみに、東京都の宅建協会のHPでは、各種契約書式のダウンロードを
 するには会員になる必要があるようで、入手出来ませんでした。
 ケチ臭いですね。

ただ、賃貸借契約書を作成していて一点、気になったのが、反社会的勢力の排除条項をどうするか、ということです。

まずは、京都の宅建協会が公開している賃貸借契約書の反社会的勢力の排除条項を、以下に抜粋して記載してみたいと思います。

<建物賃貸借(一般事業用)の一部抜粋>
第10条(契約の解除)
3 甲又は乙の一方について、次のいずれかに該当した場合には、
  その相手方は、何らの催告も要せずして、本契約を解除することができる。
  一 第12条の確約に反する事実が判明したとき。
  二 契約締結後に自ら又は役員が反社会的勢力に該当

第12 条(反社会的勢力の排除)
甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又は
  その構成員(以下総して「反社会的勢力」という)ではないこと。
二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる
  者をいう)が反社会的勢力ではないこと。
三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
四 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
  ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
  イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
<抜粋終了>


ということで、上記契約書では、一方の当事者は、契約の相手方が反社会的勢力だった場合、賃貸借契約書を催告することなく解除出来る内容となっております。

なお、京都府と東京都の暴力団排除条例はほとんど同じ内容となっておりまして、両条例とも、「契約の相手方が反社会的勢力であった場合、催告をすることなく、契約を解除出来るような条文を定めるよう努力しなければならない」と定めており、京都府の宅建協会の賃貸借契約書フォーマットは、上記条例通りの内容となっております。

私は、当然のことながら、上記の暴力団排除条例の内容は把握しており、私の所属している雛形基本契約書には、反社会的勢力の排除条項を定めておりますが、今回、貸主として賃貸借契約書をドラフトするにあたって、ふと考えさせられたのが、「解約」じゃなくて「解除」にしないといけないのか、ということです。

ご承知の通り、「解約」と「解除」は一般的に混合されて使用されることが多いですが、正確には、双方は異なる概念であり、以下の内容となっています。


 解除:契約を遡及的に消滅させる。
 解約:契約を将来に向かって消滅させる。


ということで、上記の賃貸借契約書フォーマットでは、一方の当事者は、相手方が反社会的勢力であった場合、「契約を遡及的に消滅させる」ことが出来るということとなります。なお、契約が解除された場合には、民法第545条(解除の効果)1項の定めにより、双方当事者は、原状回復義務を負うことになります。

ということは、貸主の立場としては、契約を解除した場合、今まで受領していた賃料を反社会的勢力に返還しなければならず、さらに、民法第545条(解除の効果)2項の定めによると、受領時から計算した利息と合わせて賃料を返還しなければならないことになります。

数か月の賃貸借期間であればまだいいものの、数年間、契約関係が継続した後に契約を解除する場合、返還しなければならない賃料及び利息はかなりのものになりますので、これは厄介なことになりますね。

まぁ、相手方に対する損害賠償の請求金額の方が、返還しなければならない金額を超えるでしょうから、トータルで考えればマイナスにはならないとは思いますが、実際、契約を解除する事態となった場合、どうなるのか分かりません。

都条例が「解約」ではなく「解除」を採用した理由は、おそらく、「反社会的勢力との関係を一切絶たなければならないんだ」という強い姿勢をアピールする目的と、相手方が反社会的勢力に該当することの確認を契約前に怠ったもう一方の当事者の責任を考えてのことでしょうか。

ということで、長々と書いてしましましたが、私が作成したドラフトでは、上記懸念事項を考慮した結果、「何らの催告も要せずして、本契約を将来に向かって解約することができる」という内容にしてみました。

ちなみに、「本契約を将来に向かって解約することが出来る」と言う表現は、「頭痛が痛い」と同様、違和感のある文言ではありますが、相手方との間で、後々、解釈の相違が生じないよう、あえて上記の通り記載してみました。

なお、東京都暴力団防止条例では、契約の解除条項を定めることは契約者の「努力義務」なので、「解除」を「解約」にしても御咎め無しでしょう。たぶん・・。

最後に、私は、「反社会的勢力の排除」のテーマについては、これまでは購読している雑誌の「BLJ」や「ビジネス法務」で取り上げられていたら読むくらいで、専門書を読んだことは無いので、これを機に勉強してみたいと思います。
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解除と解約

はじめまして。不動産会社の法務をしている者です。
解除と解約の意義については、確かに教科書的にはお書きになっているとおりかと思いますが、解除が契約を遡及的になかったものとするという意義は、債務不履行の効果を及ぼさないということであって、取消のように、契約が成立してから解除されるまでに収受した対価まで返還せよということではありません。賃貸借契約を解除する訴訟において、契約成立以降の収受した賃料を返還するので、賃料相当損害金を請求するなんてことはしません。
また、解約については確かに多義的な用語なのですが、賃貸借契約の場合、合意解約に近い意味で捉えられますので、反社条項の効果として解約をお書きになると相手方の同意が必要といういちゃもんをつけられるリスクがあるのではないかと思います。
不動産業界では、例外なく解除ですね。

解除と解約

>「解約」と「解除」は一般的に混合されて使用されることが多いですが、正確には、双方は異なる概念であり

おっしゃるニュアンスの違いがあるとよく言われますが(そのニュアンスをできるだけきれいに使い分けようとするのは自由ですが)、法的には厳密に使い分ける実益がないので、ドラフティング・レビューの際も無視する、というのが実務だと思います。

『契約用語使い分け辞典』(新日本法規)にも、
「民法でも「解除」と「解約」とが使い分けられているわけではありません…(民651等)」
と指摘があります。

私は不動産取引の契約実務には詳しくありませんが、以下サイトに“「解除」と「解約」は、不動産取引の実際において厳密に使い分けられているわけではなく”との言及がありました。
http://www.kindaika.jp/archives/1667

蛇足ですが、「将来に向かって解約」という言い回しはあまり目にしないので違和感を感じました。解除の遡及効が継続的取引の過去履行分に及ばないことを確認する規定として(「解約」という言葉をあえて使用せずに)「将来に向かって解除」という言い回しを使う例はよく目にします。

最近、目にしたボー排

最近は、
『1項:表明保証に違反した場合は、解除できるとして、、、
2項:第1項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者(反社側)は、その相手方に対し、解除により生じた損害を賠償しなければならない。
3項:第1項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者(反社側)は、解除による損害について、その相手方に対し何らの請求もすることができない。』
と、反社側をふんだりけったりの状態にする規定が多い気がしますね、上場企業、金融業界とかの雛形は。
あと上場企業とかは、取引関係先を某テレコンのサービスで年に1回くらい一括調査をかけてもらって、その調査結果をまとめたディスクを大事に保管してますかね。

コメントありがとうございました!

経文緯武さん

ご指摘ありがとうございます。

>解除が契約を遡及的になかったものとするという意義は、
>債務不履行の効果を及ぼさないということであって、取消のように、
>契約が成立してから解除されるまでに収受した対価まで
>返還せよということではありません。
>賃貸借契約を解除する訴訟において、契約成立以降の収受した賃料を
>返還するので、賃料相当損害金を請求するなんてことはしません。

上記の部分ですが、「契約成立以降の収受した賃料を返還するので」の部分は、「契約の解除時以降に収受した賃料を返還するので」の誤記でしょうか。
もし、私の勘違いでしたら申し訳ありません・・。

私の基礎知識不足により、「解除が契約を遡及的になかったものとするという意義は、債務不履行の効果を及ぼさないということ」というところが理解出来なかったのですが、ご指摘内容は、「賃貸借契約」の「解除」は、(民法第620条に基づき、)あくまで将来に向かって契約が消滅することであり、貸主は、契約成立時から契約解除時までに収受した賃料については返還する義務は負わないので、

(1)賃貸借契約を解除するので、契約は契約時に遡って消滅する
(2)双方に原状回復義務が生じ、貸主は、契約時から解除時までに
   収受している賃料を返還する義務が生じる。
(3)借主が反社会的勢力でなければ、契約を解除して返還する
   必要の無かった上記賃料相当額について、貸主は借主に
   損害賠償を請求する。

  ※上記(3)の他、当然、契約解除に起因して貸主に発生した
   損害についても、借主に賠償請求をする。

という話には、そもそもならない、という内容と理解させて頂きました。

ご指摘の通りかと思います。「賃貸借契約を解除する場合には、契約時に遡って双方に原状回復義務が生じるはず」という、私の考えが誤りでした。ご指摘ありがとうございました。

また、ご記載頂いた下記リスクについては、認識しておりませんでした・・。

>解約については確かに多義的な用語なのですが、賃貸借契約の場合、
>合意解約に近い意味で捉えられますので、反社条項の効果として
>解約をお書きになると相手方の同意が必要といういちゃもんをつけられる
>リスクがある

契約書には「何らの催告も要せずして」と記載しているので、問題無いと考えておりました。

契約書には、「解除」と記載するにしろ「解約」と記載するにしろ、解除・解除時の効果について、明確に契約書に記載し、双方で解釈の相違が無いようにしたいと思います。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

はっしーさん

いつもご指摘ありがとうございます。

コメントにご記載頂いたリンクを拝見し、民法第620条(賃貸借の解除の効力)の存在を今回、初めて知りました。勉強不足でした・・。

<民法第620条(賃貸借の解除の効力)>
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。

民法第620条によると、「賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる」ようですので、賃貸借契約書において、解除条項に「解除」という文言を用いた場合でも、契約時にまで遡及して契約が消滅するわけではなく、契約書の文言としては、「解除」でも「解約」でもどちらでも良い、と理解しました。

なお、今回の契約書の反社会的勢力の排除条項については、皆様からのコメントや、上記リンク内の回答・監修者コメントを参考にさせて頂き、再度、検討してみたいと思います。

また、今回のように、民法の条文に関する知識不足をカバーする為、今後、気になるテーマについては、民法の条文を特定のワード(今回であれば「解除」)で検索するようにし、知識の漏れをカバーするようにしたいと思います。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

田舎法務さん

ご指摘ありがとうございます。

私の所属会社は、大手取引先の暴力団排除条項に倣い、まさに、ご指摘頂いたような「反社側をふんだりけったりの状態にする規定」を基本契約書に定めております・・。

幸いなことに、当社はこれまで、上記条項に基づいて契約を解除等しなければならないような事態には遭遇したことがありませんが、今後の判例で、暴力団排除条項がどう判断されるのか、結果が見えた段階で、必要に応じて、条項の内容を変更していきたいと思います。

hitorihoumu

No title

>賃貸借契約を解除する訴訟において、契約成立以降の収受した賃料を
>返還するので、賃料相当損害金を請求するなんてことはしません。

上記の部分ですが、「契約成立以降の収受した賃料を返還するので」の部分は、「契約の解除時以降に収受した賃料を返還するので」の誤記でしょうか。
もし、私の勘違いでしたら申し訳ありません・・。

のところですが、誤記ではなくて、述語が「しません」なので、そもそもあり得ないことを想定して書いております。仰るとおり620条があるので、賃貸借の場合は「遡及」という意味がそもそもないということは、ご理解のとおりです。

経文緯武さん

経文緯武さん

再度、コメントを頂きありがとうございました。

「契約成立以降の収受した賃料を返還する」こともしないし、
「賃料相当損害金を請求するなんてこと」もしない

点、理解致しました。

読解力不足ですみません・・。

今後ともご指導の程、よろしくお願い致します。
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主に、週末にブログを更新する予定です。

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