今週のサザエさんは「法定責任説」と「契約責任説」、OSS(オープンソースソフトウェア)の2本です

今般は、TMI総合法律事務所が編集した「ソフトウェア取引の法律相談」を読んでみました。

本書は表題の通り、ソフトウェア取引に関する契約や法律問題について、Q&A形式で解説されていまして、また、「本書は、ソフトウェアを題材としつつも、あらゆるビジネスにおいて必要な『契約』一般についての解説本になることも意識して執筆した。」と、はしがきで述べられている通り、契約書全般について押さえておくべき事項も解説されています。その為、あまりソフトウェアに関する契約書には携わらない、という人にも読む価値があるかと思います。

早速ですが、個人的に心に留まった個所を抜粋しておきたいと思います。


<以下、抜粋箇所>

瑕疵担保責任といっても、売買の瑕疵担保責任では損害賠償の範囲が契約締結のための調査費用といった買主が目的物に瑕疵が存在することを知っていたならば被らなかったであろう損害(これを「信頼利益」と呼びます。)に限定されると解されているのとは対照的に、ソフトウェア開発委託のような請負契約における瑕疵担保責任では、その損害賠償の範囲が信頼利益に限られず、目的物の交換価値といった目的物に瑕疵が存在しなかったならば被らなかったであろう損害(これを「履行利益」といいます。)にまで及ぶことにほぼ異論がなく、この点、債務不履行責任と異なるものではありません。

<抜粋終わり>


「ほぼ異論が無く」と言い切っていますが、果たしてそうなのでしょうか。

ご承知の通り、売買の瑕疵担保責任には「法定責任説」と「契約責任説」があり、「法定責任説」は損害賠償の範囲を「信頼利益」まで認め、「契約責任説」は同範囲を「履行利益」まで認めています。上記抜粋部分はおそらく「法定責任説」を前提に話を展開されているかと思われますが、瑕疵担保責任は「法的責任説」で考えて「ほぼ異論が無い」と主張されています。

正直、私はどちらの説が判例・学説上で有力なのかというのは理解出来ていないのですが、TMI総合法律事務所がそう言うのですからそうなのでしょう。

願わくば、今議論中の民法改正の中で、「法定責任説」と「契約責任説」問題にも決着をつけて貰いたいものです。

さて、次に、少し長いですが、個人的に心に留まった個所を抜粋しておきたいと思います。


<以下、抜粋箇所>

OSSでは、ソフトウェアの権利者が、そのソフトウェアを利用者に法的にライセンスするという形態をとります。「オープン」や「フリー」という言葉から、ソフトウェアの著作権等が放棄さてされているかのように誤解されることがありますが、決してそのようなことはありません。むしろ、ソフトウェアの権利者が著作権等の権利を保持しているがゆえに、その権利をライセンスするという形態を取ることが可能となり、権利者の望む態様でソフトウェアが利用されるようにコントロールすることができるのです。ソフトウェアの権利者は、利用者がライセンス条件に従っている限りは権利行使しませんが、それに違反した場合には著作権等を行使することが可能となります。したがって、OSSを利用するためには、このようなライセンス条件に従っている必要があります。

<抜粋終わり>


とういうことで、上記抜粋以後に、GPLライセンスを代表例とする「相互性ライセンス」の概要、留意点、対処法が解説されています。

恥ずかしながら、「フリーソフトウェア」は、まさに自由にソフトウェアを使用・改変することが出来る、と考えていましたが、私が使用許諾約款等をしっかり読んでいないだけで、フリーの中にも一定の制約があるんですね。

以前、取引基本契約書(当社が受託側)をチェックしていましたら、「オープンソフトウェアを使用して成果物を開発する場合、委託者に事前承諾を得なければならない。」と定めている条文を見たことがあります。当時は(今も)、私の所属会社がソフトウェア開発を受託することは全く想定していなかったので、あまり気にも留めていませんでしたが、上記条文は「相互性ライセンス」の弊害を意識した条文だったのでしょう。

今思えば、上記契約チェックをしていたときに、社内のシステム担当に、上記条文の意図を参考までに聞いてみるべきでした orz

私の所属会社がソフトウェアの開発を受託することは今後ともありませんが、当社が自社使用する為のソフトウェアを第三者に開発委託することは良くありますので、今後は、上記概念を押さえながら、契約書チェックを実施していきたいと思います。

また、本書を読んでいて、ソフトウェアに限らず、私はIT全般の契約書に疎いことを再確認しましたので、本書の類書を読んで、当該契約書特有の知識・ノウハウを補強していきたいと思います。

<目次>
序章 総論
第1章 開発契約
第2章 紛争と解決方法
第3章 権利帰属
第4章 既存ソフトの利用
第5章 関連契約・関連文書
第6章 諸法

ソフトウェア取引の法律相談 (新・青林法律相談)ソフトウェア取引の法律相談 (新・青林法律相談)
(2013/01)
TMI総合法律事務所

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少し気になったので。
売買は法定責任説にのっとり、請負は契約責任にのっとった記述と思われます。
ローマ法ではもともと故意責任しかありませんでしたが、
これに過失という要件を加えたのが法定責任であり、
さらに「過失」という言葉を「債務者が契約によって引き受けた」と読み替え、責任を厳格化したのが契約責任です。

契約責任説に対して今の説明ではなぜ、履行利益の責任まで引き受けたと契約の解釈がなされるのか違和感を覚えられたかもしれませんが、これは契約責任説批判にも繋がっています。
債務の履行を自己決定しても当然に損害賠償まで自己決定したことにはならないという批判です。

コメントありがとうございます!

TO:学部生の方

コメントありがとうございます!
返信が遅くなりましてすみません。

私の言葉が足りませんでしたが、私が2013年4月20日付の上記記事で
違和感を覚えたのは、「ソフトウェア取引の法律相談」では、
「売買」の瑕疵担保責任は「法的責任説」で考えて「ほぼ異論が無い」と
主張されている点です。

「売買」の瑕疵担保責任では、賠償請求者は、「法定責任説」ではなく、
「契約責任説」に基づいて、「履行利益」の賠償まで請求する余地は
「ほぼ無い」と考えて本当に良いのか、疑問に感じています。

とはいえ、今回、コメントでご記載頂いた「故意責任」から「契約責任」への
推移を含め、瑕疵担保責任の法的性質については、正直、私は詳細な
理解・知識を持ち合わせていませんので、上記疑問は疑問のままとなっています。

そこで、上記テーマについては、今後の課題として勉強を進めていきたいと思います。

今後ともよろしくお願いします。
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