中国からの撤退リスクと債権者との関係について

先日(1/14)の日経新聞に、「事業撤退にアジアリスク 退職金巡り労使紛争 税務当局認可2~3年」という記事が掲載されていました。

昨今、中国の労務コストやカントリーリスクが増加してきたことにより、中国から撤退しようとする日本企業が増加しているものの、撤退時に、想定外に多くの時間・お金が掛かることから、スムーズに撤退が出来ない事例が多いようですね。

賃金や売掛金の支払いを求める中国の労働者、取引先が、撤退する企業の現地経営者の身柄を拘束したり、暴行したりする事件も発生しているようです。

なお、私の所属している会社に、某メガバンクから定期的に配布されてくる某法務系冊子によりますと、中国から違法な撤退をした場合、出資者、株主、経営者、高級管理職は以下のような責任が問われる可能性があるようです。


<民事責任>
会社法第150条(賠償責任)
董事、監事、高級管理職は、法律、行政法規又は会社定款の定めに違反し、適時清算義務を履行せず、会社に損害を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。

会社法第20条、第21条(連帯責任)
株主権利及び法人の独立的地位の濫用が見られる場合、出資者、株主或いはその他の関係責任者が法人の債務或いは責任を直接負わなければならない。

<刑事責任>
刑法第224条(契約詐欺罪)
不法占有を目的に、相手方を欺き、又は相手から商品、貸付金、前払金或いは担保財産を収受した後、逃亡隠匿するような場合。

刑法第203条(追徴方法消滅罪)
企業が撤退前に既に税を滞納したうえで資産移転或いは隠匿を行い逃亡するような場合。

刑法第313条(執行拒否罪)
人民法院の判決及び裁定を執行する能力を有しながら執行を拒否するような場合。

刑法第193条(借入金詐欺罪)
貸付金を隠匿したまま貸付期限が満了を迎えた後返済を拒む場合
貸付金を持ち逃げした場合


一方、「撤退する日本企業の中国現地法人」の債権者という立場で考えると、撤退する法人が夜逃げ同然で中国から撤退した場合に、どのように債権を回収するかという問題があります。

もちろん、当該企業の敷地内に設備等が残存していれば、債務名義を得た上で、競売手続で当該設備等を換価することで、いくらかでも債権を回収することは出来るかもしれません。

しかし、自力救済が(暗黙的にも)日本よりも広範囲に認められる中国では、真面目な債権者が悠長に債務名義を得ている最中に、中国ローカル企業がトラックを工場・倉庫に乗り付けて、残存している設備等を無断で持ち出そうとするでしょうし、競売でいくらかの配当を得られたとして、労働債権等の優先債権の存在により、手元に入ってくる金銭は微々たるもので、「焼け石に水」となるでしょう。

そこで、撤退した中国法人の日本の親会社に責任を追及しようとしても、親会社が、違法な撤退に伴う日本でのレピュテーション喪失を何とも思わないような中小企業で(中小企業全般を蔑視しているわけではありません)、当該経営者が中国に入国すると、中国の労働者や取引先だけでなく、中国当局に身柄を拘束されるリスクがあるので、今後一切、中国の地を踏まないし、中国でのビジネスはしない、と腹を括ってしまっている場合、債権者としてどうするのか。

このような相手に、中国現地法人の株主としての同義的な責任を問うたとしても意味がなく、当該親会社から、中国現地法人の債務に対する連帯保証等は取得しておらず、親会社は中国法人の単純な出資者である場合、親会社に対して責任追及していくことは難しいでしょう。

また、日本と中国間では「犯罪人引渡し条約」が締結されていないので、「日本に既に帰国していたとしても、今回の違法撤退問題で、あなたの身柄が日本当局から中国当局に引渡されますよ。それでもいいんですか?」と脅かすことも有効ではありません。

ということは、違法撤退した中国法人の債権者は、ただ指をくわえて泣き寝入りをするしかないのでしょうか。この問題については、個人的な課題として、引き続き調べてみたいと思います。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : ビジネス
ジャンル : ビジネス

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
プロフィール

hitorihoumu

Author:hitorihoumu
35歳 男 二児の父
主に、週末にブログを更新する予定です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: