仮差押えの対象資産について(日本と中国の場合)

今般は、川野 雅之氏、権田 修一氏共著の「現場目線の債権回収」という本を
読んでみました。

なお、権田 修一氏は、皆さんご存知「債権回収基本のき」の著者であり、本書では
「債権回収基本のき」よりは実務上の話(=それで、実際どうすればいいのか)が
多数出てきますので、「債権回収基本のき」の次に読む本としてお勧めします。

さて、本書で個人的に参考になった個所を以下に書き留めておこうと思います。


 <以下、仮差押えの解説箇所の一部抜粋>
  「東京地方裁判所の運用では、仮差押えの申立ての際に、相手方の本店所在地
  または住所地の土地・建物の登記事項証明書(登記簿謄本)を提出させています。
  つまり、相手方が不動産を所有していないことを疎明しないと、動産または債権の
  仮差押えを認めない、という運用をしています。」

 <以下、強制執行の解説箇所の一部抜粋>
 「東京地方裁判所では、相手方が不動産を所有していないことを疎明しないと、
  動産または債権の仮差押えを認めない、という運用をしていると説明しましたが、
  強制執行の場合には、対象に制限はありません。
  相手方が不動産を所有していても、いきなり商品を差押えたり、預金債権や
  売掛金債権を差押えすることもできます。要は、回収しやすいものを狙い撃ちして、
  強制執行によって回収を図ることができる、ということです。」


ということで、東京地裁に仮差押えをする場合、いくら保証金を裁判所に提供すると
いっても、あくまで「仮」の手続きであるということもあり、相手方(=仮差押えを
受ける方)に影響の少ない順番で仮差押えをする必要があり、相手方が不動産を
所有している場合は、「まずは不動産から」ということになるようです。

ちなみに、中国での仮差押え事情については、以前、弁護士に確認した内容と、実体験に
よれば、日本の事情と同様、仮差押えの対象は、相手方への影響度を考慮して判断され、
債権の中でも特に売掛債権に対する仮差押えは、相手方の資金繰りに直結することに
なることもあり、裁判所がなかなか許可してくれません。

また、預金債権に対する仮差押えについては、日本と同様、申立者が自分で銀行口座を
指定して申し立てをする必要があり、相手方が自社の知りえない銀行口座を開設して
資金を移転したらOUTで、裁判所が自発的に相手方の口座を調査して仮差押えを
してくれることはありません。

また、相手方が従業員への給与支払いに使用している銀行口座に対する仮差押えについては、
影響度の観点から裁判所はなかなか許可してくれません。

債権回収の解説本には、「仮差押えは不動産、動産、債権に対して実施可能」と一般論が
記載されているものの、実施に債権に対して仮差押えを実行するのはかなりハードルが
高いと言えます。

この辺の事情を知らないと、いざ意気込んで、保全手続きをしようじゃないか、という段階で、
相手方の「売掛債権」に仮差押えをしようとしても思うようにいかず、相手方の不動産には
銀行の抵当権が既にベタベタ付いており、結局、市場価格では二束三文にしかならないような
動産(=製造設備等)を、相手方が計上している簿価を評価額として仮差押えした時点で、
仮差押えした総額が自社の債権額に到達して仮差押えが終了、という残念な事態となりかねません。

結果、保全手続き開始前の強気な見通しを訂正せざるを得なくなる(=訴訟の実施の決裁権者を
ミスリードする)ことにもなりかねませんので、上記事情は是非覚えておきたいところです。


(注)上記の中国の事情は、私が中国の某地域の事情について確認、体験した結果であり、
   地域性が強い中国では、地域毎に裁判所の判断内容に大きな相違がある可能性が
   ありますので、上記内容はご参考程度にお考えください。

<目次
第1部 取引先の実際の姿を知るために知恵をしぼる
    (与信はまず、得意先を取り巻く環境に注視する;企業の存亡は、
    経営者次第;倒産は、融資を受けている金融機関がどこかで決まる;
    決算書を見る前に頭に入れておくこと;「いつでも借りられる」という誤解が
    倒産を招く;「金融機関依存型倒産」の見極め方;ファンドやTAMが
    入っている企業は危ない;登記簿謄本から見る与信;危機的な状況下で
    見られる現象;仕入れ先の与信も重要になる)
第2部 債権回収に関する法律的な知識を使いこなす
    (支払が滞っている取引先にはこのように対処する;裁判所を利用して債権を
    回収する;取引先の危ない兆候をキャッチしたらどうすればよいか?;
    取引先の突然の倒産に備える)

現場目線の債権回収現場目線の債権回収
(2011/10)
川野 雅之、権田 修一 他

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