双方未履行の契約解除に伴う損害賠償債権の相殺可能性に関する一考察

今回、この記事を書くに到った経緯等はあえて書きませんが、備忘録の為に
書きとめておくことにしました。

早速ですが、破産手続開始決定時に、破産者、取引先ともにその義務を
履行しないままの状態で残存している契約関係がある場合、破産管財人は、
破産法53条1項に基づいて契約の履行か解除を選択出来、当該契約解除により
損害を被った非破産者側は、破産法54条1項に基づいて当該損害の
賠償請求権を破産債権として行使出来ます。

ここまでは特に議論の余地はありませんが、上記のような損害賠償債権を
自働債権として相殺することは出来ないようです!!
(↑何を今さらと感じた方はご容赦ください・・)

^^(以下、伊藤眞氏他著「条解 破産法」破産法第72条1項に関する記述を抜粋)^^

また、後述の1号の相殺禁止の趣旨からは、破産手続開始後に新たに発生した破産債権を
取得する場合(「他人の」破産債権を取得するのではない場合)も1号が類推適用されると
解されるべきである。

(中略)

債権者平等原則を害する相殺を禁止するという趣旨は、71条1項各号と同じである。
すなわち、破産財団所属の債権について破産手続開始後に、あるいは危機時期に、
特定の破産債権者のために新たに相殺権という担保負担を発生させることは
禁じられているのである。

(中略)

1)破産手続開始後に新たに発生しうる破産債権として、97条1号から4号が
挙げるもののほか、54条1項、58条2項・3項、59条2項、60条1項、168条2項2・3号がある。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

^^^^(以下、破産法第72条1項)^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

破産法第72条
1.破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
①破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。
②支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能で
 あったことを知っていたとき。
③支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、
 支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において
 支払不能でなかったときは、この限りでない。
④破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、
 破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

なお、破産手続に基づく配当率はせいぜい数パーセント程度であることを考えますと、
契約を解除されて、第三者に転売やキャンセルも出来ずに廃棄せざるを得なくなった
在庫の仕入額によっては、泣くに泣けない損害が発生する可能性があるわけです。

個人的には、破産法54条1項に基づき取得した損害賠償債権は、破産前に締結した
契約関係に基づいて派生した債権であり、「他人の破産債権を取得した」ものと
同列に扱うべきではなく、この債権を相殺の自働債権として認めないことは、
むしろ「債権者平等の原則」に反すると考えますが、いかがでしょうか!!

といっても、私の様な一介の法務担当がここで主張した所で、大先生達が
「解されるべきである」と言っている以上、どうしようもありませんが・・


条解破産法条解破産法
(2010/03/02)
伊藤 眞

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