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元総務&法務担当の部屋     

これまで、ある企業で約十数年間、法務担当(+α)として仕事に従事していた者です。最近、財務・経理部門に移動しました。このブログは、仕事に関する書籍を読んだ感想や仕事を通じて感じたことを備忘録として書き留めておく為に立ち上げました。
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書籍:業界で噂の劇薬裏技集 不動産大技林(全宅ツイ著作)

今般は、「業界で噂の劇薬裏技集 不動産大技林(全宅ツイ著作)」という本を読んでみました。


本書アマゾン紹介文章(抜粋)

─毒入り危険。読んだらアカン─

不動産業界の偉人たちが金儲けや出世のために使っていた刺激的な裏技を、プロフェッショナル集団である「全宅ツイ」が、ブラックなユーモアを混じえながら紹介・解説していく実用書。

口語文体と多くのイラストで読みやすく、リスキーな技には弁護士のコメントも収録。
中堅業界マンのみならず、多くの業界人に気づきと学び、そして夢を与える一冊に。

仲介、売買、デベロッパー、大家、管理会社、地主、ブローカー、建築士…
【『儲けたい』すべての不動産従事者へ】





1.初めに
私は以前、不動産の売買仲介会社で営業担当に従事していたことがあり、また、その経験を評価されて、今の会社で不動産の売却や調査等の業務が発生すると相談されたり主担当となることがあり、「不動産」にはずっと関与してきて興味・関心のある分野の為、この手のトンデモ本が出ると、(決して参考図書にするつもりはないものの)お風呂にでも入りながら力まず読める本のジャンルとしてつい手が出てしまいます。

さて、本書には法律的・社内ルール的に真っ黒な方法、限りなく黒に近いグレーな方法等がたくさん登場してきますが、その中でも比較的マイルドな方法について、懐かしさから心に留まりましたのでこちらで書き留めておきたいと思います。



2.合法的媒介囲い込み法
以下は、本書P100 「ウル技49 合法的媒介囲い込み法(一般でも専任以上の影響力)」に面白おかしく書かれた内容を私が平易な文章にまとめたものです。


売買仲介会社が、あえて「一般媒介契約」で売主から売却の依頼を受けて、物件をレインズ(不動産流通標準情報システムの略称。不動産業者だけが見ることの出来る物件データベース)に物件情報を載せず、自力で買主を見つけて、売主と買主の両方から仲介手数料を獲得しようとする技。

レインズに物件を掲載した場合、媒介契約を締結していない不動産業者が売主に飛び込んで、(時には現在の売主側仲介業者の悪口を言いつつ)「自分にも売却活動をやらせてください」と依頼し、媒介契約を他社に切り替えられてしまい、売主側の業者として仲介手数料を受領出来る地位を失う恐れがあります。その為、レインズ登録義務のない「一般媒介契約」を締結して、極力、他社に知られないよう水面下で自社にて買主候補を探し、売主、買主の双方から仲介手数料を受領しようとするもの。

レインズに掲載しなくても、ネットや新聞で広告を打てば、売り物件の存在を知った他社が売主に飛び込むリスクは出てくるものの、レインズに掲載しなければその機会・リスクを大幅に減らすことが出来る。



[hitorihoumuからの使用上の注意]
この方法は、原則、法律上は違法ではないものの、技の使い方によっては売主の信頼を裏切り、売主の利益を損なう場合もありますので(この場合は違法となる場合も)、使用の際には注意が必要です。



3.hitorihoumuによる詳細解説

(1)媒介契約のレインズ登録義務について

仕事、プライベートで不動産の売買に関与した方であればご存じかと思いますが、不動産会社が売買、賃貸の仲介を行う場合、宅地建物取引業法上、業者は依頼主と「媒介契約(自身に代わり売却、購入活動を実施することを業者に依頼し、その対価として報酬を支払いますという契約)」を締結する必要がありますが、媒介契約には下記の三種類があります。

以下、話を単純化する為に、売主側の仲介業者のケースだけ記載します。


1.一般媒介契約
複数の仲介業者に重ねて依頼することができる。

2.専任媒介契約
媒介契約した一社にしか依頼出来ない。
※2週間に1回、売主に売却活動を報告する義務あり。

3.専属選任媒介契約
媒介契約した一社にしか依頼出来ない。さらに、専任媒介と異なり、依頼主は、自分で発見した買主と直に売買することが出来ず、仲介会社を介して取引する必要がある。従って、自分で買主を発見したもにかかわらず、業者に仲介手数料を支払う必要がある。
※1週間に1回、売主に売却活動を報告する義務あり。



専任契約、専属選任契約の場合は、媒介契約後、所定の期間内にレインズ上に物件情報を公開する義務が生じますが、一般媒介契約の場合はその義務はありません。上記義務に基づく掲載の結果、レインズには一般消費者向け不動産サイト(HOME’sやat home等)には掲載されていない物件も多数掲載されています。

(利用料を支払った)不動産業者は、他社が掲載した売り物件の情報を見て、自身の顧客(購入物件を探している客)の希望条件にあるものがあれば顧客に紹介することが出来、成約に至れば、自身の顧客(買主)から仲介手数料を受領出来ます。

なお、レインズへの登録期限は以下の通りです。

※専任媒介契約時のレインズ登録期限:媒介契約締結の日から7日以内
  専属専任媒介契約のレインズ登録期限:媒介契約締結の日から5日以内

2種類の専任媒介契約にレインズの登録義務の課しているのは、専任の権利を得た不動産会社が、自社の購入希望顧客との取引を優先して情報を抱え込んでしまう行為を防止し、物件情報をより多くの不動産会社に提供することで、(売主にとって)より好条件の買主・借主を探すことにあります。

(2)注意:専任系媒介契約であれば抱え込みが無くて安心、というわけでもない。

一般的な不動産情報サイトには、下記の2つの理由により、一般媒介契約よりは専任系媒介契約を選択するよう個人の売主に勧めていることがあります。


[理由]
①一般媒介契約を締結して複数の不動産業者に売却を依頼した場合、不動産業者からしたら、せっかく自社の費用で不動産の広告を打っても、他社が先に買主を見つけてきたら全く利益が発生しないため、売却活動に消極的となる可能性がある。その為、専任系媒介契約の方が、業者が真剣に費用と時間を掛けて売却活動を実施してくれることが期待出来ること。

②一般媒介契約の場合、業者がレインズに掲載しないケースもある中、専任系媒介契約はレインズへの登録が強制されているので、幅広く買主を募ることが出来ること。

③媒介系契約の方が定期的な活動報告義務があること



なお、仲介業者は、売主側と買主側の両方から仲介手数料を受領することが出来ます。ちなみに、両方から仲介手数料を受領することを業界的に「両手」、どちらか一方からのみ手数料を受領することを「片手」といい、どの業者も、売主と買主の両方から仲介手数料を貰いたいと考えるものです。

その為、業者が専任系媒介契約を締結してレインズに物件が登録、公開して、他社が売主側の仲介業者に

「買主候補者がいるのですが、この物件はまだ紹介可能でしょうか?」

と問い合わせた際、まだ売主側業者では買主候補者を見つけることが出来ていないにもかかわらず、

「すみませんが、今、具体的に購入を検討している人からがいるので紹介出来ません。」

と言って他社からの紹介を断るケースも多々あります。

ただ、これをやりすぎて時間が経過し、なかなか成約に至らない場合、売主が売主側業者の活動に不信・不満を抱く場合もありますので、しばらく経って自分で買主を見つけられない場合はしぶしぶ、他社が見つけて来た買主に紹介して売却し、売主側の仲介手数料の「片手」で済ませるケースもあります。売主にとっては迷惑な話ですが、不動産業界では良くある話です。

その為、専任系媒介契約の方が情報開示されて売りやすくなるとは一概には言えない場合があります。

そこで、あくまで個人的な意見としては、不動産の売却を検討している方には、「専任系媒介契約」ではなく「一般媒介契約」を複数の業者と締結して、不動産業者に抱え込みをさせないようにした方が良いかと思います。

まとまりのない長文となりましたが、推敲するのに疲れたので掲載します。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
私の愛すべき依頼者たち~10のエピソード
(弁護士に弱みを見せるな。弁護士のアタマの中がよくわかる。
弁護士の交渉過程がリアルにわかる。)
(野島梨恵氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
M&Aを成功に導く 法務デューデリジェンスの実務(第3版)
(長島・大野・常松法律事務所)

[本書で参考になった内容等]
1.表明保証条項を頼りすぎてはいけない
DDにおけるインタビューにおいて潜在債務が存在しないという明示的な回答を得ていた場合でも、別途開示された資料においてその存在が明確になっている場合は、結局、潜在債務の存在について明示的に開示されていたという認定をされる可能性がある。

DDの過程において買主が知っていた事実か、当然に知り得るべき事実と判断された場合、表明保証違反に基づく買主の補償請求が同様に認められない可能性がある。
※大阪地判平成23.7.25(金融商事判例1375-34)


[hitorihoumuメモ]
DDの結果、売主が潜在債務を保有している可能性を認識したものの、その内容について(時間的制約もあり)DDの段階で突き詰めることをせず、万一の際は契約書上の表明保証で解決すればいいかとする姿勢には後々、問題が生じるリスクがあることが分かりました。



2.法務DDにおいては、「事実」と「法律」の2つのレベルの問題を意識すべし。
「事実」に関する事項については、時間的制約もあり、その内容の正確性を疑う特段の事情が無ければ、原則、開示された資料、インタビュー結果により現れた事実が正確であることを前提とするケースが多い。

一方、特定の法律問題に関する法律的な解釈についてDDにて売主から見解を得たとしても、当該法律解釈についてはDDを実施する法律事務所にて調査の上、独立した判断を下す必要がある。売主の見解を鵜呑みにしてはいけない。

3.スタンド・アローン問題
買収等の結果、買収対象となる会社が親会社グループから切り離されることになるため、事業を従来通り存続する為に必要な親会社とのグループ間取引(親会社への過度な依存)が無いかどうかを確認すべし。

4.対象会社が第三者の権利(知的財産権等)を侵害するリスクの検討
現実に発生している紛争や、売主、対象会社が既に認識している潜在的な紛争リスクを除き、将来の上記リスクを法務DDの過程で分析・検討することは困難。

5.競業禁止条項に注意
競業禁止条項は色々な契約書に定められるケースがあり、契約終了後も当該効力が残存するものと定めているケースも多い。当該条項の存在により、買収後、当初想定していた事業再編等が実施出来ず、シナジー効果が得られないリスクがある。
その為、法務DDの過程では、契約が既に終了している契約書にも競業禁止条項がある可能性があることを考慮してDDすべし。



[hitorihoumuメモ]
「過去〇年以内に契約が終了している契約書」と指定して開示請求する方法の他、「競業禁止条項を含む契約書(契約終了しているものを含む)」と指定して開示請求する方法がありますね。さらに、競業禁止条項を含む契約書が無いことを表明保証させた方が良いですね。



6.独占的権利の付与に関する契約書にも注意
競業禁止条項と同様、上記条項の存在により、買収後、当初想定していた事業再編等が実施出来ず、シナジー効果が得られないリスクがある為、独占的権利の付与に関する契約書、契約条項の有無を確認すべし。

7.規程と異なる実務慣行の有無を確認すべし
DDの過程で各種規程の開示を受けたとしても、(どの会社も同じように?)実務が完全に規程通りに実施されていないケースがあるため、特に規程との乖離が大きいことが想定される労務関係(サビ残の状況等)についてはインタビューの段階で実施状況を確認すべし。

8.開示されない紛争の発見方法
対象会社が弁護士等に支払った報酬の内容についてヒアリングすると、DDの過程で開示されていない対象会社が抱えている法律問題、潜在的な紛争を発見出来る場合がある。

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