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元総務&法務担当の部屋     

これまで、ある企業で約十数年間、法務担当(+α)として仕事に従事していた者です。最近、財務・経理部門に移動しました。このブログは、仕事に関する書籍を読んだ感想や仕事を通じて感じたことを備忘録として書き留めておく為に立ち上げました。
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(法務担当の方でも勘違いし易い)下請法に関する留意点(計9項目)

この記事は「法務系 Advent Calendar 2018」の12月7日のエントリーです。
seko_lawさんからバトンを受け取りましたhitorihoumuです。



1. 初めに

今回、勢いで、昨年までは見て楽しんでいるだけだった本企画に思い切って参加させて頂きました。

ただ、多くの読者の方に刺さる記事となるネタを持ち合わせていなかったことを参加登録後に改めて気付き、本日(12/7)の足音が徐々に聞こえてきた今週月曜頃は、さてどうしたものかと悩んでいました・・。

そこで、ここは開き直り、一部の方には(おそらく)役に立つ、私でも語れるテーマとして、中小企業庁や公取委による下請法に基づく立ち入り検査にメイン担当として対応した経験もベースにして、法務担当の方でも勘違いし易い下請法に関する留意点を以下にまとめてみました。

下記項目の中には、下請法の対応担当者のバイブル的な存在である「下請取引適正化推進講習会テキスト(中小企業庁・公取委発行)にも記載が無い、公取委の相談窓口等に確認して把握した下請法上の細かい運用・解釈についても記載しておりますので、テキストは全て読み込んでいる方にも少しはご参考になるかと。

ただ、下請法には全く関係しない業務をされている方には何の参考にもならない内容で申し訳ありません・・。



2. (法務担当の方でも勘違いし易い)下請法に関する留意点

(1)下請代金の支払遅延の禁止(受領後「60日以内」とは?)
 
下請法上、親事業者は、物品等を受領後「60 日以内」に定められた支払期日までに下請代金を支払う必要があります。

この「60日」とはざっくり「2ヶ月」と解釈して良いのか、厳密に「60日」をカウントすべきなのかという疑問が生じます。

例えば、「毎月末日納品締切、翌月末日支払」という締切制度で支払条件を合意している場合において、親事業者が8月1日に物品等を受領した場合、

①翌月末にあたる9月30日(2ヵ月後)までに下請代金を支払えば良いのか、はたまた、
②8月は「31日」、9月は「30日」あるので、厳密にカウントした「9月29日」に支払えばいいのか

という疑問が出てきます。

上記ポイントについては、下請法上、大の月(31 日)も小の月(30 日)も同じく1か月として考えるよう運用されていますので、上記①と解釈すれば良いようです。



(2)割引困難な手形の交付の禁止(手形サイト「120日以内」とは?

下請法上、親事業者は、割引困難な手形を下請事業者に交付することが禁止されており、現在の運用上、繊維業では「90 日」、その他の業種は「120 日」を超えるサイト(期間)の手形が「割引困難な手形」であるとされています。

では、上記(1)と同じような話で、手形サイト「120日」(その他の業種の場合)とは、ざっくり「4ヶ月」と解釈して良いのか、厳密に「120日」をカウントすべきなのかという疑問が生じます。

例えば、7月末日に手形を振り出す場合、割引困難とはならない手形サイトの満期日の上限は、

①4ヵ月後の月末である「11月30日」なのか
②8月は「31日」、9月は「30日」、10月は「31日」あるので、厳密にカウントした
 「120日」後の「11月28日」なのか

という疑問が出てきます。

上記問題については、上記②と解釈する必要があるようです。
これはあくまで私の主観ですが、便宜上、上記①と解釈して処理している会社もそこそこあるのではないかと思いますが、上記①で解釈して、例えば122日のサイトとなる手形を発行してしまった場合、下請法、違反となります。

ちなみに、ちょうど120日のサイトで発行した手形の満期日が金融機関の休業日に該当し、実際に決済されるのは翌営業日となった場合でも、「割引困難な手形」=「120日を超えるサイトの手形」を交付したことにはならないようです。あくまで、120日以内の手形を発行しているかという形式を満たしているかどうかが判断基準となるようです。



(3)注文書面の交付義務
  (原材料等を有償支給する場合に記載すべき事項)


親事業者は、下請事業者に物品等の製造を委託するにあたり、有償で原材料等を当該下請事業者に支給(販売)する場合は、製造委託の発注書面に、当該有償支給材の「品名」、「数量」、「対価」、「引渡しの期日」、「決済期日及び決済方法」を明記して提示する必要があります。

なお、毎月のように、「部材の有償支給」と「加工品の買い上げ」が発生する量産取引を継続的に実施している場合、親事業者では「支給部材」と「加工品」を完全には紐付けすることが出来ず、今、現時点で下請事業者が支給部材をどれ位の数量、在庫として保管していて、親事業者が下請事業者に発注する際、下請事業者がどれ位の数量を追加発注する必要があるのか、また、歩留まりがありますので、追加発注した場合にどれ位の残材が残るのかが分からず、下請事業者から支給材の発注を受けて初めて、必要数量を把握するケースもあるかと思います。

上記ケースにおいては、加工品の発注書面の交付時に支給材の各項目を記載出来なくても、下請事業者から支給材の発注を受けて、加工品の製造に必要な有償支給材の数量等を把握した後、直ちに、上記情報を下請事業者に書面で提示すれば運用上、良いようです。

但し、上記方法の場合でも、発注書面に記載した加工品を製造する為に必要な数量と、下請事業者が発注した支給材の数量が、下請事業者の保有する在庫の数量によっては完全には紐付けされない場合もありますが、運用上は上記対応で問題無いようです。

しかし、まあ、下請事業者の立場からしたら、自分が発注した数量等の情報が記載された書面が、親事業者から改めて提示されるだけであり、何の有益性も無い情報を受領することになりますが、公取委によると、上記は形式的な話ではあるものの、下請法上、必要な対応のようです・・。何だかなと言う感じですね。



(4)有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
  (下請事業者からお願いされて部材を有償支給でも上記制限が適用される?)


親事業者が原材料等を下請事業者に有償支給する事情は色々とありますが、例えば、中小企業である加工業者(下請事業者)が原材料を自分で調達するよりも、(規模の大きい)親事業者がバーゲニングパワーを活かして原材料を調達し、下請事業者に有償支給した方が下請事業者としては安く購入出来るので、自身に代わって部材を調達して支給して欲しい旨、下請事業者からお願いされる場合があります。

下請事業者の為に上記対応をしてあげているにもかかわらず、それでも上記制限が発生するのかという疑問がありますが、下請法上、上記事情や下請事業者との合意は一切考慮されず、下請事業者に原材料を支給し、当該原材料を用いた加工品を買い戻しているという条件に合致しただけで、上記制限が適用されます。

中小企業庁、公取委は、杓子定規に下請法のルールを当てはめて攻めて?きます。細かい事情を考慮していたら指導活動がスムーズに進みませんからね。立ち入り調査時に違反行為の指摘を受けたら「事情を説明すれば分かるだろう。人間だもの。」という考えは通用しませんので十分、ご留意下さい・・。

なお、支給する材料の中には、材料を材料メーカーから購入する際のMOQ(Minimum Purchase Quantity:最少発注数量)が非常に大きく、当該MOQで材料を調達して下請事業者に支給後、当該材料を全て使い切るまで1年位の長い期間が掛かるケースもあります。

そんな場合でも、下請事業者の依頼に応えるべく、上記違反とはならないよう、加工リードタイムを考慮して支給材料の入金条件を1年近い長期に長く設定しなければならないのは、キャッシュフロー的には辛く、厳しい話ですね。

さらに、下請法適用となる外注先となるのは中小企業となりますが、上記ケースの場合、当該支給先に対して長期の与信が発生しますので、こんな不都合が生じるなら、代わりに部材を調達して有償支給することなんか止めてしまおう、そもそも、下請法の適用の無い大手競合メーカーに切り替えよう、となる親事業者もいるかもしれません。

仮に、下請事業者の希望で支給してあげたいものの、上記制限の関係で支給を断念したとすれば、この制限規定が果たして下請事業者の保護に繋がっているのか、個人的に疑問が残るところです・・。



(5)有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
  (支給する拠点と買い上げる拠点が異なる場合でも下請法が適用される?)


親事業者のA支店が下請事業者(X社)に部材を有償支給して、その後、当該親事業者のB支店が下請事業者(X社)から加工品を買い戻している場合でも、事業者単位ではなく、あくまで会社全体で判断されて下請法の上記制限が適用されますので、早期決済とならないよう、有償支給材の入金条件にはご留意下さい。。



(6)金型の製造委託時の下請代金の支払い起算日となる「金型を受領した日」とは?

親事業者が下請事業者に対して、下請事業者が量産品を製造する際に使用する金型の製造を委託した場合、当該金型は親事業者には納入されずに下請事業者の手元に残りますので、金型の製造委託時の下請代金の支払い起算日となる「金型を受領した日」とはいつなのか、という疑問が生じます。

上記については、例えば、金型を用いて製造された試打ち品(サンプル品)を親事業者が受領した日を金型の受領日と見なすと合意して支払うことは、下請法上、合法となります。

その為、試打ち品(サンプル品)が受入検査に合格した日を起算日として、当該起算日から60日以内に下請代金(金型代)支払うことは下請法上、違反となります。

私は某商社に勤めておりますが、サプライヤーから受領したサンプル品の出来は、明らかに問題がある場合は別として、顧客に納付して検査・判断して貰う必要があり、(下請法について考慮する必要のない)当社の顧客が検査をのんびり実施した結果、問題の無いサンプル品かどうか判明する前に当社の支払期日が到来してしまい、下請法上、とりあえず支払わなければならないというケースとなる場合があります・・。顧客に早く検査してくれるように、金型の契約時に検査期限を取り決めるしかないですね。



(7)不当な経済上の利益の提供要請の禁止
  (量産終了後の金型無償保管委託に厳しい取締りが


親事業者が下請事業者に貸与していた金型について、量産終了後も、いつかサービスパーツの製造委託で使用するかもしれないということで、保管料を支払わず預けっぱなしにする行為は、「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に該当して、下請法上、違反となります。

最近、上記違反行為について、中小企業庁、公取委は厳しく取り締まっているようですね。
ただ、上記行為が違反に該当することは分かっちゃいるけども、下請事業者に預けている金型の管理(誰にどの金型を預けているかの把握)が100%出来ておらず、実は上記ルールに違反しているけど是正がなかなか難しい、という会社は結構、多いのではないでしょうか。

上記対応漏れの無い様、金型台帳を作成する等して回収・廃棄の管理を徹底したいものですね。



(8)支払日が金融機関の休業日に該当した場合

下請代金を金融機関にて振込等で支払う場合において、支払期日が金融機関の休業日に当たる場合に、当該金融機関の翌営業日に支払う旨、下請事業者と書面で合意していれば、順延後の支払期日が受領日から60 日を超える場合でも、順延期間が2日以内である場合に限り、支払い遅延にはあたりません。上記はご存知の方も多いかと思います。

なお、順延日は「2日以内」という制限があるので、例えば、12月末に支払期日が到来する下請代金を1月の翌銀行営業日に振り込む場合、場合によっては、順延日が2日を超えてしまう場合もあります。そこで、ゴールデンウィーク前後の月末支払い分や12月末の支払日分は、休業日前に支払う一手間が必要となる場合がありますので、留意が必要です。



(9)下請代金の減額の禁止(振込手数料の実費額を超える控除はダメ)

親事業者が下請代金を振込で支払う場合の振込手数料は下請事業者が負担する旨の書面合意があり、親事業者が金融機関に支払う実費の範囲内で当該手数料を差し引いて下請代金を支払うことについては、下請法上、禁止されている下請代金の減額には該当しません。

ただし、インターネットバンキング等を利用することによって振込手数料が安く済んでいるにもかかわらず、実費額よりも高い正規の銀行手数料を下請代金から控除していることが立ち入り調査で見つかり、差額を下請事業者に返還することとなった違反事例が多数あるようです。

上記が発覚した場合、一般的には、過去1年間に遡って、過剰に受領している手数料分を返還するよう改善指導が出るケースが多いみたいですね。金融機関との交渉成果を享受して何が悪いとか何とか言っても公取委には通用しませんので、上記違反行為を実施している会社は、立ち入り検査が入る前に速やかに是正しましょう。



3. 最後に

上記に限らず、下請法には下請事業者を保護する為の細かい制約が多数ありますので、知らない内に下請法に違反していた、と言うこと無い様に十分、留意したいものですね。



P.S.

多数の制約のある下請法の適用を回避する為、下請事業者には該当しない資本金のある商社を商流の間にかまして、中小メーカーから部材を購入したいという需要?や、中小メーカーよりは補償能力の高い会社規模の商社を介して取引することで、購入したモノに不具合が発見された場合は商社に補償を請求出来るようにしたいという需要?があり、大手製造メーカーが商社を取引に介在させているケースが少なからずあるのではないかと、某分野の商社に所属している私は考えています。

ただ、上記商社の立場としては、取引に介在して売上・利益を上げることが出来ますので、大手メーカーの上記姿勢はけしからんと言うつもりはありませんが、商社の法務担当である私としては、上記事情で取引に介在した結果、取引で得られる利益を大きく超えるリスクを抱えることないよう、契約書等でしっかりリスクヘッジ可能なように営業部門のサポートするよう心がけています。

上記に関連した記事を以前、本ブログに記載したことがあるので、当該記事のURLを以下に貼り付けておきたいと思います。商社不要論が昔から唱えられていますが、未だに無くならないのは、下記記事に記載した機能も大きな理由かもしれません・・。


[本ブログ:関連記事]
商社の隠れた「品質保証機能」について
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-441.html

VMI契約の「瑕疵担保期間の起算日」、「取引終了時の在庫の取り扱い」に注意
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-447.html



以上で本記事は終わりです。
ここまでダラダラとした長文にお付き合い頂きありがとうございました・・。

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