法務部門の「売り」とは何か?

1.契約審査部門の役割、売りとは何か?

最近、積読していた「Business Law Journal 2018年5月号」をようやく読み終わりました。

早速ですが、本誌で個人的に心に留まった箇所を以下の通り、抜粋しておきたいと思います。

下記は、


法務部門における品質確保・向上の方法論 第6回

[座談会]
安定した品質のアウトプットを出し続けるための方策(上)」

Syn.ホールディングス株式会社 コーポレート本部長 兼 法務室長 雨宮 修氏
シティ法律事務所 弁護士 古谷 誠氏 著作


の一部抜粋です。


法務審査の対象とする契約の範囲をどのように設定するかについては、各社とも試行錯誤しつつ方針を決定していた。契約類型や金額により区別することは多くの会社で行われていると思うが、それを事業部門側に理解して貰うには、基準自体の分かり易さにくわえて、社内イントラネットで判断できる仕組みを設けるなど、ユーザーインターフェースの充実も必要である。

また、座談会では、レビューする対象を限定することについて事業部門やマネジメント層から疑問の声が上がったというコメントもあり、そもそも法務部門が何を自分達の「売り」としているのか、サービス提供部門として常に自問し、定義することが重要であると痛感した。

各法務部門においては、会社のステージによって法務部門に求められる役割が異なることを意識したうえで、提供するサービスの範囲を定義することが求められるといえる。



上記抜粋中の

「法務部門が何を自分達の「売り」としているのか、サービス提供部門として常に自問し、定義することが重要」

というのはその通りですね。



2.法務部門に対する契約書の確認依頼時の申請フォーム制定

当社では、これまで、営業部門から契約書の審査依頼を受ける際、営業部門になるべく手間・負荷を掛けず、また、お役所的になって法務部門に対する敷居が高くならないように、ということで、特に依頼フォームを設けず、メールか電話一本で契約書の確認依頼に応じるようにしていました。

ただ、従来の方法ですと、法務部門(私)の教育・啓蒙活動不足もあり、「営業の方でチェックしてみた結果、○○の箇所が要修正かと思いますが、どうでしょうか?」という感じで法務部門に確認依頼してくれる、意識の高い少数の営業担当は別として、一般的な営業担当は、取引先から提示された契約書を「確認お願いします」という数行の冷たいメッセージと共に法務部門に転送して確認依頼するだけ(言い方は悪いですが「伝書鳩」のような対応)で、事前の契約チェックはしてくれません。

その結果、営業部門の審査能力・取引先との面前での契約交渉能力がなかなかUPしないという副作用が発生していました。

また、営業部門が契約書を事前に確認してくれない場合、契約書を見ただけでは分からない、営業担当しか把握していない、目の前の取引固有のリスクについて、法務部門のチェックだけでは検討漏れが発生するリスクを抱えていました。

さらに、営業部門から契約確認の依頼を受ける都度、法務部門が、取引商品、取引商流、取引規模、取引に至る経緯等、契約審査を行う上で必要な項目を営業担当に(いちいち)確認しに行く手間が生じ、業務が非効率となっておりました。

そこで、


 (1)営業担当者の契約審査スキル向上(→当社の契約交渉力UP)
 (2)取引固有のリスクを考慮した契約審査の実施(審査の質の向上)



を目的として、先般より、営業部門が法務部門に契約審査を依頼する場合、営業部門は、所定のチェックシート(※)に基づいて契約内容をチェックし、そのチェック結果、取引内容の概要(取引商品、取引規模、商流等)、営業部門の所見欄を入力したシートと契約書を合わせて法務部門に送付し、契約審査の依頼をする運用に変更しました。

  ※品質保証期間・補償方法等、せめてこれだけは最低限、営業担当にも
    確認・把握して欲しい6項目程度に絞った重要条項に関するチェックシート
    (営業部門の所見欄付)

上記試みは始めたばかりですが、運用開始後の状況、思わぬメリット・デメリット・営業担当の反応については、個人的な備忘録と誰かの参考の為に、今後、本ブログにて継続的に掲載していきたいと思います。

  ※この手の申請書・チェックシートの営業担当の所見欄・自由記入欄は、
   たいがいブランクとなるか、あまり意味の無いコメントが記載されるだけと
   相場と決まっていますので、どうすれば、営業担当だけが把握している情報を
   ヒアリングによらず、申請書上に書かせて引き出すことが出来るのかが、
   今度の申請書フォームの課題と考えています。  

  ※営業部門の混乱・反発を抑えるため、全社にオープンにしてませんが、
   この運用が上手くいって営業部門の契約書審査レベルが上がってきたら、
   将来的には、営業部門がチェックシートを用いてチェックした結果、
   リスクがないと判断した契約書は、法務部門の審査無しで
   締結可能なフロー変更し、法務部門はリスクの高い契約書の
   審査に専念出来る体制とすることを構想していまして、
   上記も上記運用の隠れた第3の目的と考えています。

   ただ、現在のレベル感を考えますと、上記構想が実現出来るのは
   1、2年掛かりそうですが。。。

   また、後述するように、営業部門が考える法務部門の売り、
   効率論を考えますと、上記構想は実現しない可能性もありますが。。。



3.営業部門と法務部門の役割分担

上記試みを始めてみて、従来の方法と比較して営業部門の負荷は増えるものの、上記目的について理解を得られたのか、心の中と営業部門内の会話の中では、面倒くさいな~と言いながらも、表立った不平不満は表に出さずに対応してくれているのか分かりませんが、一応、運用は進んでいます。

なお、運用期間はまだ短いながらも、これまで営業部門の方から指摘を受けた内容をいくつかご紹介すると、


「営業部門と法務部門には役割分担があるはずで、営業部門は営業活動に専念すべき。
 契約書のチェックをしている時間・余裕は無い。
 契約書の交渉窓口は対応するが、契約審査自体は、専門の法務部門が対応した方が良いのでは?

 「法務部門がダブルチェックするのであれば、営業部門の一次チェックは不要では?」



という、効率論を掲げたご指摘です。

上記指摘にも一理あるとは思うものの、営業部門に過度な負荷をかけず、かつ、上記目的も達成可能な絶妙なバランスを目指して、試行錯誤しながら、この運用・啓蒙活動を進めていこうと思います。


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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
会計参謀-会計を戦略に活用する(谷口 学氏著作)

[本書にて参考になった、個人的に思い当たる節のある問題]
トップ主導の直感頼みの投資計画・M&A
     ↓
投資の入り口が甘く、投資リスク・達成目標の検討が不十分
     ↓
投資後のモニタリングが不十分

------------------------------------------

不採算事業の現場から撤退の提案が出ることは期待薄
社内のしがらみ等が邪魔をして不採算事業にメスを入れることは難しい
     ↓
明確な撤退基準・事業評価指標を設けて、例外なく不採算事業に対処すべし

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ドクター・プレジデント 開業医の戦略的事業拡大ストーリー
(田畑 陽一郎氏著作)

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国をまたぐ親子会社による債務保証時の場合でも、債務保証料は授受しなくても良いのか。

1.関連当事者間の債務保証時には保証料を授受すべきか

今般は、「キャリアアップを目指す人のための「経理・財務」実務マニュアル(下)」と言う本を読んでみました。

早速ですが、本書で心に留まった個所を以下の通り抜粋しておきたいと思います。


22. 債務保証管理
税務上のポイント

1. 法人税
(1)債務保証料をとらない場合

親会社が子会社の借入金に対して債務保証を行うこと自体は、経済的取引ではないと考えられている為、たとえ無償で行ったとしても、税務上、経済的利益供与には当たらないと考えられています。



上記書籍は、一般財団財団法人 日本税務協会というちゃんとした団体が出版していて、さらに、日本CFO協会最高顧問・前金融庁監督庁顧問 金児昭氏が監修している本ですので、間違ったことは書いていないとは思いますが、一般的には、親会社が子会社の債務保証を行う場合でも債務保証料を取るべき、という考え方もあるようですが、果たしてどうなんでしょうか。



2.国をまたぐ関連当事者間の債務保証時には保証料を授受すべきか

さらに、ここで個人的に気になるのは、日本の親会社が外国法人の子会社の債務を保証する場合でも結論は同じになるのか、ということです。

内国法人間であれば、グループ会社間で保証料を授受してもしなくても、日本の税収的にはほぼプラマイゼロになるので、日本の税務当局としてはまぁ良いと考えるとしても、国をまたいで債務保証をする場合、日本の親会社が保証料を受領しないと、親会社の利益が増えない(日本の税金が増えない)ことになりますが、日本の税務当局はそれでも「債務保証を行うこと自体は、経済的取引ではない」とか何とか言ってOKしてくれるのか、素人考えとして気になるところですね。

上記について少しググってみたところ、約10年前の記事ですが、以下のような記述を見つけました。


税経通信 2009年9月号
https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/industries/typical/pdf/accounting-tax-06-2009-11-06.pdf

<業種に特有な会計及び税務処理シリーズ> 第6回
海外に子会社のある会社特有の税務 -法人税申告書別表十七に基づく移転価格税制の実務的解説-
新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人(現:EY税理士法人)/税理士 佐藤雅弘氏

※以下、上記記事のP219一部抜粋。
  赤文字下線部分はhitorihoumuが赤文字下線化しました。



<⑥ その他の対象となる取引として「信用保証の対価」>
国外関連者が現地金融機関からの借入により資金調達する際に,親会社が金融機関に対し債務保証をする場合があります。債務保証は一般的な経済取引であり,移転価格税制の対象となります。

また,正規の債務保証でなく金融機関との信用関係に基づく便宜的なものとして,国外関連者の信用上の問題が生じた場合にその債務の保証を行うことを金融機関等に約束する保証予約についても,金融機関に対し実質的な保証と同等の効果がある場合には,国外関連者に対し信用供与していると認められることから,オフ・バランスであっても債務保証と同様に移転価格税制の対象となりますのでご留意ください。




国税速報2007年3月1日号(第5868号)掲載

取引形態別移転価格税制(5)
~関連者間の債務保証取引について~

新日本アーンストアンドヤング税理士法人(現:EY税理士法人)
移転価格グループ マネージャー 早川直樹氏

※以下、上記記事のP2一部抜粋
  赤文字下線部分はhitorihoumuが赤文字下線化しました。



2. 保証契約における有償性の検討

(1)保証契約について

  (中略)

保証人の果たす保証行為は、被保証者に対し便益を与える行為であり、当該行為の遂行においてリスクが生じ得ることが十分考えられる。そのため、通常の第三者が保証行為を為すときに、掛かるリスクに応じた対価をもとめるのと同様に、関連者間において一方の関連者が他方関連者に保証行為を行った場合に、当該保証行為に対する対価を要求することは当然と解することは合理的である。

保証委託契約については、一般には、主たる債務が完済されるまで、主体債務の残存額に対してある一定の割合相当額の保証料を支払う形態が主流である。



上記記事以外にも、関連当事者間の債務保証であっても、適正な保証料を授受すべき、と解説している、最近UPされた信頼出来そうな情報筋の解説記事等がいくつかありましたので、おそらく、約10年前から現在においても、上記考え方に変わりはないんでしょうね。たぶん。

また、上記記事抜粋から考えると、上記書籍(「経理・財務」実務マニュアル(下))抜粋に記載の、「親会社が子会社の借入金に対して債務保証を行うこと自体は、経済的取引ではないと考えられている」という箇所も、本当にそうなのか、やはり気になりますね。



3.移転価格税制に関する経理部門の思考方法

ちなみに、移転価格税制上、契約内容・スキームが問題あるかどうかを経理部門に相談するとたいてい、


「このスキームであれば、日本の税収が増えることになるので、日本の税務当局は何も言わないから大丈夫なものの、中国の税収は下がることになるから、中国の税務当局から問題視されそうですね」



というように、「税収が増える国側の税務当局は何も言わない」的な回答を得ることが常ですが、本当に上記のようなシンプルな考え方で良いのか、税務当局は日本の税収が減る方向となるとにしても、正しい課税を目指すという思考は取らないと考えて本当に良いのか、いつも個人的にモヤモヤしています。

いずれにしても、上記書籍を参照しながら、国をまたぐ・またがないにかかわらず、保証者となる親会社は、債務者の子会社から債務保証料は取らなくても良いのかどうか、今度、経理部門に聞いてみようと思います。

[その他、本書にて参考になった事項]
会計上の「利益」(収益-費用)を基に、法人税法で定める特有の調整事項を加減算して、「所得」(益金-損金)を算出する理由は、効率面から優れているだけでなく、株主総会で承認(報告)された企業会計上の「利益」をベースにすることで、「所得」の金額に客観性を持たせることにもある。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
・はじめてのアメリカ法 補訂版(樋口 範雄)

[本書にて参考になった事項]
(1)アメリカでは、訴訟提起の際に裁判所に支払う手数料は、日本と異なり、訴額に応じて印紙代が高額になる制度になっておらず、莫大な金額の請求訴訟も安価に提起することが出来る。さらに、ディスカバリーにより、相手方から情報収集が可能となることもあり、日本と比較して、とりあえず訴訟を提起してから和解交渉を進める、というケースが多い。

(2)アメリカ法では、あくまで「将来」の交換取引を内容とする約束と合意を約因のある契約として保護する。

(3)アメリカには「効率的契約違反」(efficient breach)という考え方があり、契約違反は悪ではない為、契約違反に対して懲罰賠償は認められない。その為、契約上の損害賠償額の予定額が法外な場合、違約罰として無効となる場合がある。日本では上記のようなことはない。

(4)アメリカでは、過失責任主義の下、行為者の自由を保護することを重視しており、不法行為責任法の目的は、日本法のように損害の公平な填補や被害者の救済ではなく、自由として保護する範囲を超えた不合理な行為を抑制することにある。故意は誰が考えても不法な行為なので、強力に抑制すべき行為として懲罰賠償が認められやすくなる。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ケチな社長はなぜお金を残せないのか? 単行本(吉澤 大氏著作)

 <メモ>
 本書を通じて知りましたが、吉澤 大氏が下記ブログを運営されており、
 税務関連のトピックが解説されていて参考になります。

あなたのファイナンス用心棒 吉澤大ブログ
http://alliancellp.net/yoshizawaacc.blog/

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
課長の会計力(望月 実氏)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)
財務3表実践活用法 会計でビジネスの全体像をつかむ(國貞克則氏)

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主に、週末にブログを更新する予定です。

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