VMI取引を進める上で死守すべき条件(書籍:VMI―無在庫経営に向けた新ビジネスモデル)

今般は、「VMI―無在庫経営に向けた新ビジネスモデル(湯浅 憲治氏、松井 正之氏著作)」という本を読んでみました。目次は以下の通りです。

 <目次>
 第1章 VMIと物流戦略
 第2章 VMIの背景と分類
 第3章 VMIの理論
 第4章 VMIの導入事例
 第5章 VMIの構築手順
 第6章 VMI支援システム
 第7章 VMI倉庫のある工場のレイアウト問題
 第8章 更なる在庫削減に向けて

本書は、出版されたのが2003年3月とかなり昔なのですが、VMIをメインで解説した書籍がほとんど無い中、何か一つでも得るものがあればと思い、アマゾンをポチリました。

早速ですが、本書で心に留まった箇所を以下の通り抜粋させて頂きます。

<以下、本書p99 抜粋>
VMI構築に必要な条件は多々あるが最も重要なのは情報の共有化である。もちろんベンダーが買い手の生産計画を常に共有することが大前提となる。生産計画は買い手からすれば会社の機密事項であるが故にベンダーとパートナーシップの確立が重要となってくる。一方でベンダーからすれば供給タイミングは生産計画の制度に依存しているため信頼関係の確立・継続が不可欠である。
<抜粋終了>

<以下、本書p101 抜粋>
“VMIはベンダー泣かせ”とのイメージは、引取責任の問題から発している。急に、ある最終製品の製造がなくなったからといってVMI共有倉庫の在庫をすべてベンダーが引取りすべてのリスクを負担するということではVMIを成功させることは難しい。リスクをシェアし且つ納得いく契約条件設定が不可欠である。
<抜粋終了>

<以下、本書p75 抜粋>
(5)ベンダーへの保証
ベンダーへの押付けとならないようIBMが配慮したのは、前述の点だけではない。電子回路基板に使用されるICをはじめとする電子回路部品は仕掛開始から完成までのリード・タイムが比較的長いものが多く、また小売業のVMIのように単に売れ行きだけで判断できるものではないため全てベンダー任せではうまく機能しない。そこで、
・最大13週間の内示
・納入後8週間の買取保証
という形で、ベンダー各社の同意を取得した。
この点は、他のビジネス・ユニットと異なり業界の状況やプロダクトの特徴を考慮下保証制度といえる。
<抜粋終了>

本書は、VMIの素晴らしさだけを解説した本ではなく、負の側面(発注者側の配慮・譲歩が足りない場合、下請いじめになる点等)にも触れている点が評価出来ますね(何か偉そうですみません・・。)

なお、私の所属会社でもVMI取引を実施しております。VMI取引における当社の立場は、圧倒的にベンダー側(売主側)が多いこともありますが、ベンダー側(売主側)の立場として言えば、VMI取引における「発注者側(買主)-ベンダー側(売主側)」の関係について、「WIN-WIN」とは言えないまでも、「WIN-EVEN」な条件を獲得する最低条件としては、「発注者側(買主)-ベンダー側(売主側)」相互の信頼関係を基にした情報の共有化も重要ですが、それよりも、発注者側(買主)から提供されたフォーキャストに基づいてベンダー側(売主側)が確保した在庫が、一定期間、滞留した場合に、発注者側(買主)が買取る義務があることに尽きると考えております。

VMI取引では、ただでさえ、ベンダー側(売主側)は安全在庫を保有させられることで、キャッシュフローは悪化しますし、在庫保管に伴う諸費用(倉庫料、保険料等)の一部もしくは全部についても、ベンダー側(売主側)が負担するケースがあります。

ただ、この点はVMI取引当初から想定出来ておりますので、それ相応の利益(粗利)が確保出来ることが合意出来れば、納得感があります。

しかし、上記想定内の負担に加えて、さらに、在庫リスクまでベンダー側(売主側)が負担するとなれば、ベンダー側(売主側)がVMI取引で得た利益なんて吹き飛んでしまいますし、何の為にやっているのか分からなくなります。

なので、ベンダー側(売主側)は、VMI取引を開始する場合には、何としても、滞留在庫に関する発注者側(買主)の買取り保証義務だけは、契約書で明確にしておきたいものです。
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とはいえ、以前、このブログにて

VMI契約の「瑕疵担保期間の起算日」、「取引終了時の在庫の取り扱い」に注意
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-447.html

という記事でも記載しましたが、滞留在庫に関する発注者側(買主)の買取り保証義務を契約書に明記するよう交渉しても、首を縦に振らず、以下のような修正案を提示してくる会社も結構います。

<発注者側(買主)から提示される代替案(一例)>
(1)VMI在庫が長期間滞留した場合、原則、ベンダー側(売主側)は、
  自社の費用負担で当該在庫をVMI倉庫から引き上げる。
  発注者側(買主)とベンダー側(売主側)は、当該滞留在庫の
  発注者側(買主)による買取りについて誠実に協議する。

  ※協議条項は何も書いていないものと同じと考えると、
   ベンダー側(売主側)にとって非常に不利なパターン。

(2)VMI在庫が長期間滞留した場合、原則、発注者側(買主)が
  当該在庫を買い取る。
  但し、買取り金額、買取り時期等の詳細については、
  双方協議の上、決定する。

  ※一応、発注者側(買主)が買取る義務は明記されているものの、
   結局、いつ買い取るのか明記されておらず、発注者側(買主)が
   のらりくらりと買取りを拒絶する絵がうかびます・・。

特に、VMI取引の提案をしてきたのが、従来の大口取引先の場合、なかなか、強く買取り保証の明確化をいえず、上記(1)か(2)の間位の条文内容でやむなく合意に至るケースもあります。

そういえば、IFRS(国際財務報告基準)を導入している発注者側(買主)から、

「IFRS上、VMI取引において発注者側(買主)の在庫買取り義務を明確にしてしまうと、VMI倉庫に在庫が納入された時点において、発注者側(買主)が自社の在庫として認識しなければならない、とも解釈出来るので、買取り保証義務は受け入れられない」

と主張されたこともありました。

ベンダー側(売主側)からしてみれば、「そんなの知らんがな!」というところですが、いずれにしても、VMI取引を進める以上は、ベンダー側(売主側)としては、何とか発注者側(買主)による在庫の買取り保証だけは死守するように交渉したいものです。

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
アメリカン・ロイヤーの誕生―ジョージタウン・ロー・スクール留学記(阿川 尚之氏著作)
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