「開発危険の抗弁」における「科学・技術水準」の定義とは?

今回も特にネタが無いのですが小ネタを。

ご承知の通り、製造物責任法上、製造者には「開発危険の抗弁」というものが認められています。

取引基本契約書に関する交渉では、「開発危険の抗弁」を意識した修正案を提示してくる取引先もいます。私が法務担当の駆け出しの頃、当社の販売先から、当社雛形基本契約書に定められている製造物責任条項の「開発危険の抗弁」について記載した箇所に対して、以下のような修正案を提示されたことがありました。


<販売先から提示された修正箇所は下記の赤線部>
※以下、乙(=当社)が製造物責任条項上の責任を免責されるケース
乙が目的物を製造した時点における世界最高の科学・技術水準では、目的物の欠陥を発見することが出来なかったことを乙が証明した場合


その当時、製造物責任法について詳しく理解出来ていなかった私は、「なんて子供じみた修正案なんだろう。」と思ったものです。。。

しかし、「開発危険の抗弁」でいうところの「科学・技術の水準」とは、「その業界の平均的な水準」ではなく、製造物が流通に置かれた時点での「世界最高の科学・技術の水準」を意味していることを考えますと、上記修正案は、単に、製造物責任法の考え方と同じ内容に修正するものであり、決して不当な要求ではなかったわけです。

ということで、製造者としては、PL事故が発生した場合、一応、「開発危険の抗弁」を主張する予知はあるものの、製造者は、理研クラスの世界最高水準の科学・技術をしても欠陥が発見出来なかったことを証明する必要がありますので、実質、この抗弁が認められるケースは非常に少ないのでしょうね。

当社がサプライヤーから提示されるサプライヤーの雛形基本契約書に、上記のような条文(=「世界最高の」というような文言が無いパターン)が記載されているケースはあります。

上記条文を設けていた場合で、万一、PL事故が発生して、「科学・技術水準」の定義についてサプライヤーとの間で解釈の相違が生じた場合、「世界最高の科学・技術水準」と裁判所や仲裁廷も判断するかと思い、今のところ、「世界最高の」という文言を追加してくれというような要望をサプライヤーに提示したことはありませんが、私の認識が甘いのでしょうか・・。
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グループ会社に対する契約審査支援(その2)

遅ればせながら、ビジネスロー・ジャーナル 2015年3月号を読み終わりました。

2015年3月号では、「2015年法務の重要課題」という特集が組まれていました。この特集内の「法務部門の管理職に聞く課題・論点2015」という記事で、個人的に心に留まった箇所がありましたので、以下に抜粋させて頂きたいと思います。

<以下、本誌抜粋>
現地法人との関係の整理
海外子会社の運営において、経営陣や法務機能を現地化するニーズが高まってきたとき、どのように現地展開を進めていくべきか。海外子会社の暴走を未然に防止する確実な方法はないだけに、本社と現地法人との役割分担が悩ましい問題となる。

○多種多様な準拠法、紛争処理機関、事業慣行がある中、すべてを東京で見ることには限界がある。しかし、現地任せにすることは本社から見て海外事業がブラックボックス化する懸念がある。どこまでをどのような形で役割分担していくか、そのバランスが重要になる。(建設・不動産)
<抜粋終了>

どこまで現地法人に権限を与えるのかについては、色々なテーマ(与信管理やら贈収賄対応等)について言えると思いますが、個人的には、海外子会社の契約審査に、どこまで日本の親会社が関与するのかというテーマがあります。

以前、私の所属している会社(=親会社)と子会社の契約書の審査基準を統一するべく、また、子会社の契約書締結に関するルールを明確にするべく、子会社に適用する「契約書締結に関するガイドライン(正式名称は違いますが)」を策定した旨、下記記事に書きました。

グループ会社に対する契約審査支援(BLJ 2014年10月号)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-448.html

そして、上記ガイドラインを配布後、ガイドラインには、親会社の法務部門(=私の所属部門)には、「必要に応じて」相談すること、というルールにしていたものの、私の所属部門に対する契約審査依頼が急増するという結果となった旨、上記記事に記載しました。

上記ガイドラインの策定から約半年経った今では、子会社からの相談数(=契約書のファイルを単純にメールで送付してきて、「確認をお願いします。以上」という依頼を受ける数・・)が急増しておりまして、キャパオーバーになっており、タイムリーな審査対応が出来なくなっており、他の法務業務にも支障が出てきております。

そこで、今年の2月から、ガイドラインを以下の通り改定しました。

<主な改定ポイント>
(1)従来のガイドラインでは、「基本契約書」のチェックポイントのみを
  記載していましたが、「秘密保持契約書」のチェックポイントも
  追記しました。

   これで、「基本契約書」だけでなく、「秘密保持契約書」についても、
   ガイドラインを見れば、原則、子会社でチェックを完結可能なようにしました。

(2)子会社が親会社の法務部門(=私の所属部門)に契約書に関する相談をする
   場合には、事前に、子会社で必ず契約書を確認することとして、
  契約書を確認した結果、把握した懸念事項を相談時に必ず提供して貰う
   ルールを導入しました。

上記改定の表向きの目的・意図としては、(i)子会社でも契約書を確認した上で相談して貰うことで、相談者は、親会社の法務部門から指摘を受けた事項・意図について、より理解し易くなり、また、相談者は、契約書に内在するリスクをより認識した上で、相手方との契約交渉をすることが出来るようになること。(ii)相談を受けた親会社の法務部門は、実務により詳しい相談者から詳しい情報を得られる事で、より迅速かつ実務に沿ったアドバイスをすることが出来るようになることがあります。

子会社の責任者・社員には、上記目的・意図を伝えた上で、改定版のガイドラインを配布しましたが、隠れた改定目的としては、本社に相談する際のハードルを上げることで、相談数を減らすことにあります・・。

本来は、子会社が安易な「営業判断」をすることで、不利な契約書を取り交わして欲しくないので、本社で基本契約書等を全件チェックしたいところではあります。しかし、親会社である当社の法務担当が二人しかいない現状ではマンパワー不足であり、迅速な締結を考えますと現実的ではありません。

まあ、上記ガイドラインを策定したところで、実際は、管理スタッフが乏しい大多数の現地法人では、契約書を確認している時間・余裕が無いので、子会社からの相談数が減るとしても微減になるかと思いますが、極力、ガイドラインに記載した契約書のチェックポイントに基づき、子会社でも契約書を確認して貰うようにすることで、子会社の契約書審査の知見を徐々にでもUPさせ、結果として、契約審査の質を下げずに、親会社、子会社双方の業務を効率化させていきたいと思います。

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(2015/01/21)
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