書籍:体系アメリカ契約法-英文契約の理論と法務

前々から読もうと考えていたものの、600ページを超える分厚さに手に取るのを躊躇していた平野 晋氏著作「体系アメリカ契約法」を、2014年8月6日~8日の海外出張の移動中に何とか読み終えました。

本書では、アメリカの法律実務や法学教育で用いられることの多い略語(原告をπ、被告を⊿と表記する等)が使用されており、脚注が非常に多く、また、「ブルーブック」(=アメリカの主要ロースクールのロー・ジャーナル、ロー・レビューにおける引用形式の基準書)に基づく引用ルールに「固執」した書きぶりとなっています。

また、これが一番の理由ではありますが、私がアメリカ契約法に疎いという背景も重なって、本書はしっかり理解しながら読み進めないと、「あれ今、字面を追っているだけで、ぜんぜん頭に入ってなかったな。危ない危ない。」という場面が何度かありました・・(笑)

人にもよるかと思いますが、本書は、電車通勤中ではなく、しっかり腰を落ち着けて読める場所・時間に読むことをお勧めします。

本書で参考になった箇所は多数ありますが、主には2点ありまして、1点目は、UCC上、確定的合意書を取り交わしていた場合であっても、確定的合意書と相反する解釈をする為ではなく、説明や補足の為であれば、「取引慣行」や「取引の経過」に関する外部証拠は、「口頭証拠排除の準則」の例外となりうる点です。確定的合意書に明記されていなくても、「取引慣行」や「取引の経過」が前提となって確定的合意書が取り交わされたはずと捉えて、上記の通り解釈される、ということは、今度の契約書審査・ドラフティングの参考になりました。

また、もう1点は、弁護士報酬の負担についてです。参考になぅた箇所を以下に抜粋させて頂きたいと思います。


<以下、本書抜粋>
c. 「弁護士報酬」(attorney’s fee): 幾つかの例外を除き、原則として勝訴したπであっても弁護士費用を賠償として認定されることが無い。但し契約書内で別段の約定・方針が明記されてあれば、過半数の法域では賠償として認められる。
(中略)
なお契約法に限らず、そもそも裁判に於いて勝訴当事者であっても相手方から弁護士報酬支出の補償を得られないのがアメリカの原則であり、「American rule」と呼ばれる。その理由は、資力の無いπが価値ある請求の追行を思い止らせない為である。逆に勝訴者が敗訴者から弁護士報酬費用の支出の償還を得られる「敗訴者負担主義」のルールは「English rule」と呼ばれる。
<抜粋終了>


日本では、弁護士費用は原則として、原告・被告が各自で負担しなければならないというルールがある中、特に違和感を感じることもなく、これまで弁護士報酬も賠償対象となる旨、定めている英文契約書の補償条項をたくさん見てきましたが、本書を読んで、その根底となる考え方を知ることが出来て良かったです。

なお、上記箇所を一読した際には、「資力の無いπが価値ある請求の追行を思い止らせない為」に、なぜ、弁護士費用は原告・被告が各自で負担しなければならないという「American rule」が原則となっているのか理解出来ませんでした。

むしろ、「資力の無いπが価値ある請求の追行を思い止らせない為」であれば、自己の弁護士報酬も相手方に請求出来る「敗訴者負担主義」を採用すべきではないかと疑問が生じ、しばらく腑に落ちませんでした。

しかし、よ~く考えたところ、資力の無いπが自身の勝訴に対して絶対的な自信がある場合は別として、通常は、判決がどちらに転ぶかわからない裁判において、自身が負けるのではないかという心配がある場合、または、例えば自身はしがない一消費者で、相手方が大企業の場合で、大企業から「当方が勝訴したら、高額な弁護士費用をあなたに請求させて頂きますからね。」と暗に起訴しないように脅された場合、価値ある請求の追行を思い止ることもあるでしょうね。

「American rule」と「English Rule」についてはこれまで良く考えずに契約書審査に当たっておりましたが、米国以外の国の原則についても調査を進めていきたいと思います。

また、本書は、一回読んだだけでは、本書の内容について理解するには足りませんので、なかなか読むのに体力を使う本ではありますが、体に染み込むように繰り返し読んでいきたいと思います。

最後に、本書の著者である平野 晋氏が書いた「国際契約の〈起案学〉-法律英語の地球標準」についても、近い内に読んでみたいと思います。


<目次>

総論
第1章 契約の成立(「契約(K)」とは何か?
     契約の「成立」(formation of K) ほか)
第2章 救済(契約に係わる様々な「救済」(remedies))
第3章 法的拘束力(「強制可能性」(enforceability)に係わる諸法理
     契約能力に関する規制 ほか)
第4章 第三者と権利義務の移転(複数当事者関係(third party beneficiary:
     第三受益者)・債権譲渡と履行義務委任(assignment of right
     and delegation of duty))
第5章 保証(担保)責任(保証(担保)責任(warranty))

体系アメリカ契約法体系アメリカ契約法
(2009/04)
平野 晋

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