通常兵器キャッチオール規制の趣旨とはいかに。

先日(9/30)、「安全保障輸出管理実務能力認定試験 (STC Associate)」という試験を受験しましたが、公表された解答で答え合わせをしたところ、25問中24問正解で合格していました。
これで何の気兼ねも無く、試験に関係の無い読書が出来るのが嬉しいですね。

なお、試験勉強をしていて考えさせられた点がありますので、以下に書き留めておきたと思います。

まずは、上記試験を運営しているCISTECのHPに掲載されている、2012年2月27日に実施された第21回「STC Associate」の問題24を以下に抜粋します。

<以下、抜粋>
問題24
東京にある製鉄メーカーAは、インドネシアにある重工メーカーBから、リスト規制に該当しない鉄の鋼材10トンの注文を受けた。用途を確認したところ、戦車の部品製造に使用するとファックスで連絡を受けた。この場合、製鉄メーカーAは、通常兵器キャッチオール規制の用途要件に該当するので、輸出許可申請が必要である。
<抜粋終了>

いかがでしょうか。答えが分かりましたでしょうか。
輸出管理に関する基本知識をお持ちの方は分かるかと思いますが、上記HPに記載されている解答・解説部分を以下に抜粋したいと思います。

<以下、抜粋>
正解は、×。

インドネシアは、輸出令別表第3の2の地域ではないので、通常兵器キャッチオール規制については、経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたときのみ輸出許可申請が必要である。輸出令第4条第1項第三号及び第四号参照。
<抜粋終了>

ということです。

なお、「通常兵器キャッチオール規制」の許可申請が必要な場合は以下の2ケースです。

1.国連武器禁輸国向け輸出の場合

(a)輸出令別表第1の16の項(1)(2)に該当する貨物・技術を輸出する場合で、かつ
(b)用途要件(通常兵器の製造等の用途要件) or インフォーム要件(経済産業大臣
   からの通知)のいずれかがあった場合

2.国連武器禁輸国以外で、輸出令別表第3(ホワイト国)でない国向け輸出の場合
(a)輸出令別表第1の16の項(1)に該当する貨物・技術を輸出する場合で、かつ
(b)インフォーム要件(経済産業大臣からの通知)があった場合

上記問題は上記2ケースのいずれにも該当しないことから、輸出許可なく輸出することが出来ることになります。

しかし、上記要件であれば、

東京にある製鉄メーカーAは、国連武器禁輸国以外で、輸出令別表第3(ホワイト国)でない国であるインドネシアにあるカルト宗教法人Bから、リスト規制に該当しない鉄の鋼材10トンの注文を受けた。用途を確認したところ、将来の宗教戦争に備えて戦車を製造して保有する為、戦車の部品製造に使用するとファックスで連絡を受けた。この場合、製鉄メーカーAは、通常兵器キャッチオール規制の用途要件に該当しないので、輸出許可申請は不要

となります。

しかし、輸出管理上、これで良いのでしょうか。
上記のようなケースについては、「共同正犯」や「犯罪幇助」にて罰則を設けているから、これ以上規制は必要無いということでしょうか。

CISTECの公式テキストによりますと、「通常兵器キャッチオール規制には、大量破壊兵器キャッチオール規制と異なり、『需要者要件』はありません。これは、通常兵器の開発等を行っている企業等は、どこの国にも、自衛権があることから、多数存在するためです。」と記載されています。しかし、この理由だけでは、上記のように、国の自衛権とは関係無い人や法人に、武器の製造に使用されることが分かっている部材を輸出するのがOKとする理由にはなりません。

ちなみに、日本の輸出管理制度は、大きく「国際条約」、「国際輸出管理レジーム」、「武器輸出三原則等」からなっているようですが、

<武器輸出三原則等>
1. 武器輸出三原則(1967.4.21)
 武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策をいう。
(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

 ※佐藤総理(当時)が衆院決算委(1967.4.21)における答弁で表明

2.武器輸出に関する政府統一見解(1976.2.27)
「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。
(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び
外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

 ※三木総理(当時)が衆院予算委(1976.2.27)における答弁において
 「武器輸出に関する政府統一見解」として表明

と定められており、さらに、外為法第1条では、

外為法 第1条(目的)
この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期し、もつて国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

と、法は「必要最大限の管理」ではなく「必要最小限の管理」を求めていることから、最低限、危ない人達に武器が渡らないような制度にしているということで、納得するしかないですね。

なお、「STC Associate」の試験を受験した同僚の中には、「一般常識と少しの勉強で合格するさ」と考えている人が多くいて、この人たちは、輸出許可の有無を問う質問が出たら、許可が必要と回答しておけば大丈夫だろうと考えて、上記のような問題で間違えるケースが多いかと思います。

今度、「STC Associate」を受験される人は、「キャッチオール規制」という言葉のイメージに惑わされることなく、しっかり適用要件を覚えるようにしましょう。

P.S.
私の所属している会社の輸出管理部門の実務トップの人(最高責任者では無い)が、以前、「STC Associate」の上位資格である「STC Expert」の試験を受験したものの、不合格になって以来、受験していないとの話を聞きましたので、密かに私が「STC Expert」を受験してみようかと思います。

しかし、輸出管理部門の実務トップの人が持っていない「STC Expert」を密かに取得してほくそ笑む、というネガティブな目的の為に、オーバースペックな試験への受験勉強に対するモチベーションが続くのか不明なので、どうしようかこれから考えようかと思います・・。

以上、駄文でした。
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