書籍:法務担当者のための もう一度学ぶ民法(契約編)

私は現在は法務担当ながら、大学の時は法学部ではなく西洋史を専攻しておりまして、
民法は在学中に宅建を勉強した時に暗記の対象として触れただけで、
今まで民法を体系的に勉強する機会はありませんでした。
もちろんこれまで民法の解説書は読んだことはありましたが、読んではいても
どうも実務に役に立っているという実感がありませんでした。

しかし、本書は名前の通り、法務担当者が抑えておくべき民法、というコンセプト通りに
解説してくれますので、非常に興味深く読むことが出来ました。
なお、本書は民法に限らず、契約書のドラフトの仕方や法務担当が持っているべき
考え方についても教えてくれますので、「民法はもう理解しているからいいよっ、
という方にも是非一読して欲しいと思います。

なお、本書には参考になった箇所はたくさんありますが、
その一つから、今後の個人的な課題が見つかりましたので書き留めておこうと思います。

^^(以下、抜粋)^^^^^^^
契約書で定めた債権の履行が得られないとき、強制執行するために債務名義を
取るためには、訴訟に勝たなければならない。つまり訴訟上原告として、
当該請求権の存在を根拠づける要件事実を立証しなければならないのである。
その要件事実とは一体何かというと、それはまさに契約書の中に定めた用件に
ほかならない。

(中略)

契約書を作成するにあたっては、自らの請求権に係わる立証すべき事実をできる
限り少なく、また立証の簡単な事実に限定しておくことが肝要なのである。
そういう目で契約書を見ている法務担当者がどれほどいるだろうか。
ぜひとも契約書の実務を実践するうえで要件事実の考え方を重視して頂きたい。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

私が所属している会社の業界特有のことかもしれませんが、
買主(顧客)から提示される動産の雛形売買契約書には、一般的には
瑕疵担保期間は1年間と定められており、1年経過後に発見された
隠れたる瑕疵に対する売主の責任は、「売主の責に帰すべき事由」が
要件になっています。
つまり、1年経過後に買主が責任を追及する場合、「売主の過失」を
買主が立証しなければならないわけです。
たまに、「1年経過後に隠れた瑕疵が発見されたとき、売主が自己に過失が
ないことを証明し場合、売主は免責される」という条文に出くわしますが、
いずれにしても、「1年経過後の売主の責任」に関する文言については、
削除依頼を出すようにしています。

なお、以下は個人的な疑問で本書とは何ら関係ないことですが、
買主は、契約書に基づかずとも、「売主の過失」を立証することで、
民法の「不法行為」に基づき売主の責任を追及することが出来ます。
ということは、「1年経過後の売主の責任」に関する文言を削除して欲しいという
要望自体、あまり意味がないことなのでしょうか。

もちろん、不法行為よりも債務不履行の方が消滅時効が3年と5年で異なる為、
削除依頼を出すことにも一定の意味はあるとは思いますが、
上記は私の個人的な今後の課題として、回答を求めて勉強を進めて行きたいと
思います。

法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)
(2009/09)
田路 至弘

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書籍:日経文庫-債権回収の進め方

最近、債権回収関連の本ばかりを読んでいますが、
今回は表題の『日経文庫-債権回収の進め方』を読んでみました。

本書は新書ながら、債権回収に必要な基本的な知識・ノウハウはほとんど網羅されており、
条文や判例もしっかり参照しながら、実務に則した解説がなされていますので、
『債権回収 基本のき』の次に読みたい債権回収本としてオススメです。

ちなみに、個人的には、しっかりとした法務部署の無い会社に所属している、
私の様な法務兼○○担当は、弁護士の様に法的手続きに関する細かい知識を
全てしっかり覚えている必要はなく、基本的な所だけはしっかりと理解していて、
後は弁護士に確認しながら対応していく、というスタンスで十分であると考えています。
問題が発生して「どうすれば良いか全く分からない」、「弁護士に丸投げしてしまおう」
というスタンスはよろしくありませんが、「これは○○だと思うが、弁護士に念のため
確認しておこう」という風になれれば良いと思います。
上記のスタンスから考えますと、債権回収については表題の本に書いてあることを
しっかりと身に付ければ、これ以上の細かい知識は必要無いのではないかと思います。

さて、本書の中で、詐害行為取消権の要件を記載した箇所があり参考になりましたので、
少し長いですが、以下に書き留めておこうと思います。

^^^(以下、抜粋)^^^^^^^^^^^^
詐害行為取消権の行使の要件

詐害行為取消権で債権回収を図るには、以下のような壁が立ち塞がります。
決して容易ではありませんが、散逸した財産が高額なものであるときは、
チャレンジする価値はあります。受益者からさらに転得者に対象財産が移ると面倒なので、
訴訟に先立ち処分禁止の仮処分をかけておくべきです。
①債務者が法的整理手続きに入ったときは管財人などの否認権が優先し、
 債権者が詐害行為取消訴訟を提起することは許されず(破産手続については大判昭四
  10.23民集8-787)、また訴訟係属中の詐害行為取消訴訟は中断し、その後
 管財人に引き継がれる(破産45②、民再40の2、会社更生52の2)。
 かくして独り占めはできなくなる。
②詐害行為取消権の行使は訴訟によるので、費用がかかる。
③原告が債務者や受益者の詐害の意思を立証責任を負担する。
④債権者が取り消し原因を知ったときから二年間で時効により消滅する。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
上記のいくつかある要件の内、上記②の費用負担の面や上記③の立証の難しさも
さることながら、上記①の、債務者が法的整理手続きに入った後は
詐害行為取消訴訟を新たに提起できないし、係争中の場合でも、
法廷手続きに入ってしまったらその訴訟に基づく利益は一人で享受出来ない、
という点は非常に大きなハードルだと思います。

そもそも、多くの手間とお金だけが掛かって、後々自分にとって何の利益も生み出さない
事態となるリスクのある訴訟を、わざわざ全債権者の利益を考えて提起する「御人好し」は
いないと思います。
もしいるとすれば、自分が一大債権者で、「債権者平等の原則」を当てはめても
法的手続きに伴い分配される配当に比べて、実入りが多いことが想定される場合にしか、
取消訴訟を提起する者はいないと思います。

債務者が法的手続きに入る前に、詐害行為取消訴訟を提起して債権回収を図る方法も
ありますが、債務者の最新情報を他の債権者に先んじてキャッチする情報力が
大前提となりますので、営業活動を通して取引先の状態を常にチェックしていくことの
重要さを改めて考えさせられました。

債権回収の進め方 (日経文庫)債権回収の進め方 (日経文庫)
(2006/08)
池辺 吉博

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