書籍:瑕疵担保責任と債務不履行責任

私も法務担当のはしくれとして、瑕疵担保責任の法的性質には
「法定責任説」と「契約責任説」があり、「契約責任説」が現在の通説になっていることは
理解していましたが、最近の判例ではどちらを根拠に判断されているのか
までは理解しておらず、ずっともやもやとした状態でした。

そんな中、毎日拝読しているtacさんのブログ『企業法務マンサバイバル』で、
以前、表題の本が紹介されていてすぐ衝動買いをし、ずっと積読していましたが、
最近やっと読むことが出来ました。

本書では、どのような学術的議論を経て、「契約責任説」が現在のような通説的地位を
占めるにいたったのか、という推移に始まり、判例の解説はもちろん、ドイツ、フランス、
イギリスでは瑕疵担保責任がどう位置づけられているのか、そして日本でも効力が
発生したウィーン売買条約(「国際物品売買契約に関する国連条約」)ではどうなのか、
また、現行の民法改正議論が国際的動向を踏まえて「契約責任説」に向かっている流れが
解説されており、今の私の疑問と知的好奇心にピンポイントで答えてくれる
非常にお腹一杯な内容で大満足でした。

ちなみに、本書は、大学の卒業論文を書いたとき読んだ学術論文を彷彿とさせる
内容と書きぶりになっていますので、仕事で疲れた帰りの通勤電車でもさらっと頭に
入ってくるという類の本ではありません。
なので、行きの通勤時や休暇の時等、頭がまだクリアな状態でお読みになることを
オススメします(笑)

瑕疵担保責任と債務不履行責任瑕疵担保責任と債務不履行責任
(2009/08)
野澤 正充

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書籍:法務担当者のための もう一度学ぶ民法(契約編)

私は現在は法務担当ながら、大学の時は法学部ではなく西洋史を専攻しておりまして、
民法は在学中に宅建を勉強した時に暗記の対象として触れただけで、
今まで民法を体系的に勉強する機会はありませんでした。
もちろんこれまで民法の解説書は読んだことはありましたが、読んではいても
どうも実務に役に立っているという実感がありませんでした。

しかし、本書は名前の通り、法務担当者が抑えておくべき民法、というコンセプト通りに
解説してくれますので、非常に興味深く読むことが出来ました。
なお、本書は民法に限らず、契約書のドラフトの仕方や法務担当が持っているべき
考え方についても教えてくれますので、「民法はもう理解しているからいいよっ、
という方にも是非一読して欲しいと思います。

なお、本書には参考になった箇所はたくさんありますが、
その一つから、今後の個人的な課題が見つかりましたので書き留めておこうと思います。

^^(以下、抜粋)^^^^^^^
契約書で定めた債権の履行が得られないとき、強制執行するために債務名義を
取るためには、訴訟に勝たなければならない。つまり訴訟上原告として、
当該請求権の存在を根拠づける要件事実を立証しなければならないのである。
その要件事実とは一体何かというと、それはまさに契約書の中に定めた用件に
ほかならない。

(中略)

契約書を作成するにあたっては、自らの請求権に係わる立証すべき事実をできる
限り少なく、また立証の簡単な事実に限定しておくことが肝要なのである。
そういう目で契約書を見ている法務担当者がどれほどいるだろうか。
ぜひとも契約書の実務を実践するうえで要件事実の考え方を重視して頂きたい。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

私が所属している会社の業界特有のことかもしれませんが、
買主(顧客)から提示される動産の雛形売買契約書には、一般的には
瑕疵担保期間は1年間と定められており、1年経過後に発見された
隠れたる瑕疵に対する売主の責任は、「売主の責に帰すべき事由」が
要件になっています。
つまり、1年経過後に買主が責任を追及する場合、「売主の過失」を
買主が立証しなければならないわけです。
たまに、「1年経過後に隠れた瑕疵が発見されたとき、売主が自己に過失が
ないことを証明し場合、売主は免責される」という条文に出くわしますが、
いずれにしても、「1年経過後の売主の責任」に関する文言については、
削除依頼を出すようにしています。

なお、以下は個人的な疑問で本書とは何ら関係ないことですが、
買主は、契約書に基づかずとも、「売主の過失」を立証することで、
民法の「不法行為」に基づき売主の責任を追及することが出来ます。
ということは、「1年経過後の売主の責任」に関する文言を削除して欲しいという
要望自体、あまり意味がないことなのでしょうか。

もちろん、不法行為よりも債務不履行の方が消滅時効が3年と5年で異なる為、
削除依頼を出すことにも一定の意味はあるとは思いますが、
上記は私の個人的な今後の課題として、回答を求めて勉強を進めて行きたいと
思います。

法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)
(2009/09)
田路 至弘

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書籍:日経文庫-債権回収の進め方

最近、債権回収関連の本ばかりを読んでいますが、
今回は表題の『日経文庫-債権回収の進め方』を読んでみました。

本書は新書ながら、債権回収に必要な基本的な知識・ノウハウはほとんど網羅されており、
条文や判例もしっかり参照しながら、実務に則した解説がなされていますので、
『債権回収 基本のき』の次に読みたい債権回収本としてオススメです。

ちなみに、個人的には、しっかりとした法務部署の無い会社に所属している、
私の様な法務兼○○担当は、弁護士の様に法的手続きに関する細かい知識を
全てしっかり覚えている必要はなく、基本的な所だけはしっかりと理解していて、
後は弁護士に確認しながら対応していく、というスタンスで十分であると考えています。
問題が発生して「どうすれば良いか全く分からない」、「弁護士に丸投げしてしまおう」
というスタンスはよろしくありませんが、「これは○○だと思うが、弁護士に念のため
確認しておこう」という風になれれば良いと思います。
上記のスタンスから考えますと、債権回収については表題の本に書いてあることを
しっかりと身に付ければ、これ以上の細かい知識は必要無いのではないかと思います。

さて、本書の中で、詐害行為取消権の要件を記載した箇所があり参考になりましたので、
少し長いですが、以下に書き留めておこうと思います。

^^^(以下、抜粋)^^^^^^^^^^^^
詐害行為取消権の行使の要件

詐害行為取消権で債権回収を図るには、以下のような壁が立ち塞がります。
決して容易ではありませんが、散逸した財産が高額なものであるときは、
チャレンジする価値はあります。受益者からさらに転得者に対象財産が移ると面倒なので、
訴訟に先立ち処分禁止の仮処分をかけておくべきです。
①債務者が法的整理手続きに入ったときは管財人などの否認権が優先し、
 債権者が詐害行為取消訴訟を提起することは許されず(破産手続については大判昭四
  10.23民集8-787)、また訴訟係属中の詐害行為取消訴訟は中断し、その後
 管財人に引き継がれる(破産45②、民再40の2、会社更生52の2)。
 かくして独り占めはできなくなる。
②詐害行為取消権の行使は訴訟によるので、費用がかかる。
③原告が債務者や受益者の詐害の意思を立証責任を負担する。
④債権者が取り消し原因を知ったときから二年間で時効により消滅する。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
上記のいくつかある要件の内、上記②の費用負担の面や上記③の立証の難しさも
さることながら、上記①の、債務者が法的整理手続きに入った後は
詐害行為取消訴訟を新たに提起できないし、係争中の場合でも、
法廷手続きに入ってしまったらその訴訟に基づく利益は一人で享受出来ない、
という点は非常に大きなハードルだと思います。

そもそも、多くの手間とお金だけが掛かって、後々自分にとって何の利益も生み出さない
事態となるリスクのある訴訟を、わざわざ全債権者の利益を考えて提起する「御人好し」は
いないと思います。
もしいるとすれば、自分が一大債権者で、「債権者平等の原則」を当てはめても
法的手続きに伴い分配される配当に比べて、実入りが多いことが想定される場合にしか、
取消訴訟を提起する者はいないと思います。

債務者が法的手続きに入る前に、詐害行為取消訴訟を提起して債権回収を図る方法も
ありますが、債務者の最新情報を他の債権者に先んじてキャッチする情報力が
大前提となりますので、営業活動を通して取引先の状態を常にチェックしていくことの
重要さを改めて考えさせられました。

債権回収の進め方 (日経文庫)債権回収の進め方 (日経文庫)
(2006/08)
池辺 吉博

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テーマ : ビジネス
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書籍:実践!債権保全・回収の実務対応

先日、債権回収に関するある外部研修に参加してきました。
その研修でレジュメと一緒に提供されたのが、表題の『実践!債権保全・回収の実務対応』
でした。その講師は、「動産売買先取特権に基づく物上代位」が結構使える債権回収手段だと
解説していましたが、そこには大きなハードルがあります。その一つは、自社の販売先が、
その商品を第三者に転売した事実を書面で自ら立証しなければならないことです。

^^^^(以下、上記テキストの抜粋)^^^^^^
最も重要なのは、X→Y→Zと転々と譲渡された商品の同一性の立証です。
商品を特定するために、品名、品番、数量、サイズ、色、形状などが用いられます。
品番は、会社ごとで異なるケースが多いのですが、品名、品番、数量が一致すれば、
かなりの確度で商品の同一性を主張することができます。
そして、売買の事実、商品の受渡しの事実、売掛債権の存在を証するために必要なのは、
売買取引基本契約、注文品・注文請書、貨物受領書、請求書です。
これらの書類に、問題の商品が明瞭に記載されていればよいのです。

(中略)

YからXに対する発注の際に、ZからYに対する発注書を添付させるように、あらかじめ
取り決めておけばよいのです。それを受けて、XからYに注文請書を発行するわけです。
この工夫だけで、特定の商品についての売買注文の事実の立証を容易に行うことが
できます。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

先日の講義では、転売の事実を立証する為の書面の取得方法を上記の様に
解説していましたが、そもそも一般的に強い立場にある買主である「お客様」に、
上記のような義務を依頼すること事態が難しく、実際は「顧客の顧客」に商品を
直送するケース以外は使えないのではないでしょうか。

また、少し話は変わりますが、以前、ある海外の取引先に対する債権回収の一環として、
まずは資産保全の為に仮差押を実施しましたが、その取引先の売掛金債権に
仮差押を実施するには、やはり取引先の有する売掛金債権の存在を自社が
立証しなければならず、有事の際にそのような資料をその取引先から入手するのは
当然困難である為、結局、預金債権と銀行の多額の抵当権が設定された不動産の
仮差押だけで満足せざるを得ないケースがありました。

なお、動産売買先取特権に基づいて商品を引き揚げ、民事執行法により、
動産に対する差押(競売)を実施して債権を回収する方法もありますが、この方法も
非常に手間がかかりますので、実務で容易に用いることが出来る方法とは思えません。

少なくとも当社ではこれまで、「動産売買先取特権」を用いて債権回収したケースは
これまでありませんが、他社の活用状況が気になるところです。

実践! 債権保全・回収の実務対応―担保の取得と実行のポイント実践! 債権保全・回収の実務対応―担保の取得と実行のポイント
(2008/11)
堂島法律事務所

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書籍:債権回収 基本のき

表題の本『債権回収 基本のき』は、私が毎日拝読しているhiroさんのブログ
『風にころがる企業ホーマー』や法務系の他のブログでも取り上げられて
いましたので、最近、債権回収に興味のある私は早速読んでみました。

本書は、はしがきに「主に事業会社に勤務されている方、特に新入社員の方や初めて
管理部門に配属された方が、債権回収に関する必要最低限の知識を短時間で
身につけることを目標としています。」と書いてある通りの本で、法務局で謄本を入手する際に
記入する「交付申請書」の書き方に始まり、出口の債権回収の方法まで、文字通り
非常に基本的な所を丁寧に解説してくれます。

約3年は法務に関わっている法務担当のはしくれの私としては、本書の載っている事で初めて
知ることはほとんどありませんでしたが(←何か上から目線ですみません・・)、
書式も多く非常に分かりやすい内容ですので、今後、法務に関する新入社員向けの研修資料を
作成する際の参考資料の一つとさせて頂きたいと思います。

なお、本書に、取引先が倒産したときに、他社が納入した商品を引き揚げて代金を回収する際の
法的な根拠に関する記述があり、勉強になりましたので以下に書き留めておこうと思います。

^^^^(以下、抜粋)^^^^^^^^^^^^^
3 他社が取引先に納入した商品を動産譲渡担保として差し入れさせる

取引先の同意を得て他社が納入した商品を引き揚げ、これを自社の支払いにあてる方法は、
法律的に、動産譲渡担保の設定および担保権の実行と構成することも可能です。
このような法律構成をとると、とりあえず1,000万円の売掛債権の担保として商品を引き揚げ、
転売してみたら300万円でしか売れなかった場合、残額の700万円の売掛債権を取引先に
請求することができます。

 (本書P200に、法律的な根拠を「代物弁済」と構成して他社商品を引き揚げた場合に
  ついても記載があります。この場合は、その商品の価格を評価し、いくらの債権の
  支払いにあてるのかを代物弁済証書等に明記する必要があり、もし、単純に
  「この商品で代物弁済する」とだけ記載した場合は、残債権があったとしても、
  債権が全て弁済されたとされてしまう、と解説されています。)

とりわけ取引先が倒産した場合には、商品価格をいちいち評価している暇はありませんから、
動産譲渡担保として引き揚げる方法を取ったほうがよいでしょう。
この方法を取る場合にも、取引先の同意があることが大前提になります。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
なお、本書には解説がありませんでしたが、取引先から倒産した旨の通知を受領し、
取引先に急いで飛んでいって、代物弁済なり譲渡担保を急いで設定して他社商品を
引き揚げた場合、仮に自働債権の弁済期が到来している場合でも、偏頗行為として
否認されてしまう可能性が高くなりますので注意が必要です。

また、支払不能になる30日以内に、債務者側に、契約等に基づいて担保を提供したりする
義務が無いのに、譲渡担保等を急遽設定して回収する場合も偏頗行為として否認される
可能性が高くなります。

しかし、否認権のリスクを恐れて回収出来る大きなチャンスを自ら放棄してしまうのも
得策ではありませんので、上記のリスクを理解したうえで、最低限は「窃盗罪」に
ならないようにだけは注意して、他社商品の引き揚げを実施してみるのも検討したいところです。

債権回収基本のき債権回収基本のき
(2008/01)
権田 修一

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35歳 男 二児の父
主に、週末にブログを更新する予定です。

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